ドニー・ダーコ

Cinema

(2001年/アメリカ)

この作品は「サスペンス映画 名画」とかで検索するといろいろなところでヒットするのですが、「よーわからん」みたいなコメントが多いので何となく後回しになっていた作品です。青空に浮かぶ恐ろしげなメタリックウサギのジャケットも「よーわからん」感が漂ってますし。

主人公は精神不安定な(精神科医カウンセラーもついている)夢遊病癖のある高校生の青年ドニー・ダーコで、舞台はいかにもアメリカという感じの住宅街とハイスクールだったりして、思ったよりも明るく、時々クスッと笑わせられたりする感じで進みます。まぁそれがメタルウサギとのギャップとなっているのわけですが。

リチャード・ケリー監督が「主人公には観客が『こうありたい』または『こうはありたくない』という両面を投影させた」「親の世代の価値観に疑いの目を持つことが大切だ」と語っていたように、どこにでもひとりは居そうな「A or B」の二元論を強要してくる老女教師に堂々と反論したり、いかにもイジメが趣味というような髭面の不良生徒にも臆することなく対応していたり、「おっ!やるね!」と主人公への感情移入も促しながら、恋もし、家族との関係も改善が進み・・・となったところでラストのどんでん返しへと繋がっていきます。

「タイムトラベル」云々は「バックトゥザフューチャー」みたいですし、過去に戻って未来を修正するというところは「バタフライエフェクト」のようですが、それが何かの真似だ、ということでは全然ありません。登場人物がそれぞれきちんと描かれているので、そういった「荒唐無稽」にも取られがちなものもリアリティを感じて観ることができます。

例のメタルウサギだって精神不安定から来る幻覚や夢遊病が精神科医カウンセラーの視点からきちんと提示されるので、「あぁそういうものなのか」と観ていられる。それぞれにきちんとバックボーンがある、という安心感があります。それが映画全体の説得力というようなものに繋がっている、と。

もちろん色んなところで書かれているように、それはこの映画の「理解」には直結しないわけですが、奇しくも作品中で主人公が「A or B」の二元論を否定したように、「この映画は〇〇です」という単純なものではなく、物事いうのは色んな要素が複雑に絡み合っていて、そんな簡単に結論付けることの出来るようなものではない、ということなのでしょう。

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