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ザ・ラストバンカー~西川善文回顧録

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西川善文(講談社) 元三井住友銀行頭取にして、前日本郵政社長の回顧録です。「不良債権と寝た男」というキャッチフレーズのとおり銀行頭取時代の安宅産業やイトマンの破綻の裏側が淡々と、それがゆえに生々しく綴られています。企業を生かす・殺す・自滅する様を見ているとあらためて「企業は生き物」だという気がします。 終盤は郵政民営化の渦に身を投じて初代社長に就任されるのですが、ここで描かれる鳩山大臣との対決は、...

ふる

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西加奈子(2012年/河出書房新社) 久し振りの小説、西さん作品です。 主人公である28歳女性の職業が外人専門のアダルトビデオのモザイク入れ、というところからして振り切ってる感があります。 かてて加えてこの主人公、普通の人には見えない「白い物体」が普通に見えてます。 西さんの作品はときどき「普通では見えないものが普通に見える」系の人たちが登場します。動物の言葉が普通に理解できる、とかですね。 この...

劇場

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又吉直樹(2017年/新潮社) お笑い芸人、ピース又吉氏の第153回芥川龍之介賞受賞作「火花」に続く第2作目です。市営図書館の「ちょっと前のベストセラー作品」というなんとも微妙なコーナーにあったので。ちなみに「火花」は未読です。 西加奈子さんや中村文則さんとの特番「タイプライターズ~物書きの世界~」では本作について、「『かいぶつ』の内臓を見せられたような気持ち」という西さんの感想もあったのでかなり...

通天閣

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西加奈子(2006年/筑摩書房) 西さんの『おまじない』という作品についての横里隆さんのインタビューでもチラッと作品名が出てきて気になっていた作品です。 例によって主人公の作業員の男とスナックでチーフとして働く女、それぞれがしんどいです。大体作品の半分くらいまで彼らに付き合うのがこちらもしんどくて「あぁもう今日はここまで」という読み方なんですが、後半にググッと引き込まれると後はラストまで一直線です...

おまじない

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西加奈子(2018年/筑摩書房) この作品は現時点での西さんの最新作なので、過去の作品を読破してから読もうと思っていたのですが、我慢できずに読んじゃいました。 この作品については出版社である筑摩書房さんのYouTube公式ページで西さんへのインタビューがアップされています。塚田農場や清原選手のエピソードなど、インタビュアーの横里隆さんの人柄も相俟って、何回見ても全く飽きません。 今回満を持して、と...

まにまに

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西加奈子(2015年/KADOKAWA) 西加奈子さんのエッセイです。例に拠って西さん節炸裂ですが、本作は第一部がいつものフリーなエッセイ、第二部が「音楽のこと」、第三部が「本のこと」という構成になっています。 特に「音楽のこと」は自分のテリトリーということもあって楽しみだったのですが、見事に総スカンを喰らいました。全く知らないアーチストばかり。 いきなり『ニュー・ジャック・シティ』という映画のサ...

まく子

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西加奈子(2016年/福音館書店) 2019年3月15日に映画化される本作「まく子」。映画ではあの草なぎ剛氏が駄目おやじ役をやることが注目されていますが、原作を読むにまずはコズエさんの不思議なクールさ、少年から大人の男への過渡期に人知れず悶絶する慧くんという小学5年生の主役たちがやはり肝です。草なぎお父さんがメインだと思って観に行く人は間違いなくガッカリすると思います。お気を付け下さい。 ひなびた...

こうふく みどりの

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西加奈子(2008年/小学館) もう何なんでしょうね、中盤の全然泣くところでもないところでボロボロ泣けてくるというのは。 中学生の女の子、緑が主人公で彼女目線で基本ストーリーが進むものの途中でゴシック体の「書簡」が挿入されます。それが誰が誰に向けて書いたものかがはっきりしないので(しかもひとりではなく、複数の書き手であるため)もやもやするのですが、最後には回収されてスッキリします、と言いたいところ...

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西加奈子(2016年/ポプラ社) 先だって色々と本作品にまつわる西さんのインタビューや番組を見ていたのである程度筋書きは知っていたのですが、やはり骨太な内容でした。 「サラバ!」でも「自分より生活レベルの低い人たちへの憐憫に自己嫌悪する」主人公がいましたが、本作ではそれに加えて「死んでいった人たちに対する罪悪感」を抱えて苦しむ主人公アイ。彼女がリストカットするようにその死者の数をノートに書き留める...

うつくしい人

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西加奈子(2009年/幻冬舎) あとがきによると執筆当時「中二状態」で、その頃に編集者と訪れた島を舞台にいわば「治療」のために書かれた作品のようです。 確かに主人公の女性は、もうこれでもか、というくらいに他者の視線、他人からどう見えているかを気にします。『舞台』の主人公を彷彿としますね。 それに加えて主人公には綺麗で繊細なお姉さんがいるのですが、ある事情で引きこもっています。そして主人公は彼女に対...