まく子

Book

西加奈子(2016年/福音館書店)

2019年3月15日に映画化される本作「まく子」。映画ではあの草なぎ剛氏が駄目おやじ役をやることが注目されていますが、原作を読むにまずはコズエさんの不思議なクールさ、少年から大人の男への過渡期に人知れず悶絶する慧くんという小学5年生の主役たちがやはり肝です。草なぎお父さんがメインだと思って観に行く人は間違いなくガッカリすると思います。お気を付け下さい。

ひなびた温泉街の集落に突如現れる母娘は冒頭からまるでアンドロイドのよう。不思議な母娘がこの後どうなっていくか、目が離せないまま物語はどんどん進み、まさかの展開に。

でも凄いのは(トーク番組で「i」について中村文則氏が言われたとおり)「西加奈子の文学の枠の中できちんと成立している」ということです。「今回は芸風を変えてSFでやってみました」というのではなく、SFをも、どこにでもいる思春期の少年の成長や閉塞的な集落の未来や神輿を壊す祭りという日本の風習の在り方といった枠組みに「取り込んで」「昇華」させている、という。

西さんの小説はどれも最後には「うっちゃって」くれるのですが、SFという相手との対戦でも同じ土俵の上できちんと「うっちゃって」くれているということですね。

ディズニーランドの花火ショーを眼前で見ているような(場所はシンデレラ城ならぬ、石垣だけの城址ですが)クライマックスシーンが映画でどう再現されるのか気になるところです。チープなSFXで台無しになってしまいそうで・・・。

他の作品でもそうだと思いますが、原作が好きだと映画化されても観る勇気ってなかなか出ないですね。

おまけみたいな話ですが、2/20の完成披露上映会の前日にやっと原作を読み終えたと語った草なぎ氏はやはり大物なのでしょう。

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