(1984年/アメリカ)
6月頃から急にin Tempoの曲に飽きてしまって、別に深い意味はなくモーツァルトの曲をずっとラジオで聴いてました。生まれてこのかたクラシック音楽にどっぷり浸かるという経験がなかったのですが、モーツァルトの凄さを身を持って感じました。
まず彼の音楽を聴きながらだと物凄く考え事に没頭できるんですね。日頃、思考で使っている脳の階層を一段下に降りてより深いところで思考するような感覚です。日頃は浪間で漂っているところが、ぐっと5mくらい深い海の中に潜っていって静かな海に抱かれているような感じです。その「潜っている感」が気持ち良い。
数々の楽器がちょうど良く鳴るところをきちんと把握しながら良く響く和音がくるだけで気持ちが「ふわっ」となります。メロディを追いかけていると、すっと違うところからメロディが来て「こっちですよ」と誘うので、そちらへ行くとまた他のメロディがやってきて、それまでのメロディパートがさっとバイプレイヤーに回るというような感じで、小川を自由に流れてくる綺麗な木の葉たちを目で追っているようで、ある真っ赤な木の葉はサッと流れて行ったかと思うと次の緑の葉はくるくると回りながら、次の黄色の木の葉はゆったりと・・・というようにずーっと見ていても飽きないのです。
そんな音楽がこの世の中にあるなんて今まで全く気付きませんでした。こういう音楽に触れてしまうと、ずっと同じリズムの単調な工場ライン的音楽がますます疎ましく感じられて仕方ないです。
というわけでこの先我ながらどうなっていくのかわかりませんが、とにかくそんなモーツァルトの生涯を描いた映画を見つけたので見てみました。監督は「カッコーの巣の上で」(まだ見てませんが、アカデミー賞受賞作品でジャック・ニコルソン主演。いつか見ないといけない作品です)のミロス・フォアマン監督。
なんかで見てもモーツァルト本人は結構ハチャメチャな人だったようで、映画でもその辺をデフォルメして愛嬌たっぷりに演出されています。素っ頓狂な笑い声とこの笑顔。
それに対して、映画の語り部でもあるサリエリの能面のような顔。でもこの人もいいんですね。F・マーリー・エイブラハムさん。同じ作曲家でありながらモーツァルトの才能を目の当たりにし続けなくてはいけない地獄を演じきっておられます。
オペラのシーンでのモーツァルト演じるトム・ハルスの指揮振りがもう完璧過ぎて見惚れました。Wikiによると「指揮法についてもネヴィル・マリナーのトレーニングを受け、マリナー曰く『たぶん彼が音楽映画の中で最もちゃんとした指揮をしていると思う』とまで言わしめた。」ということです。もう素晴らしいの一言です。
モーツァルトの奥さんコンスタンツェは大きな瞳が印象的なエリザベス・ベリッジさん。この作品以外はそんなに出演はないようですが、実に可愛らしく魅力的でした。伝記的には世界の三大悪妻のひとり、ということらしいのですが。
3時間という長さを感じさせない作品でした。ヴラボー!
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