西加奈子(2009年/筑摩書房)
小説もさることながら、そのトークの素晴らしさも魅了的な西さんのエッセイということで、期待の一冊でした。
いやあさすが西さん、想像を超えるエッセイでした。動画でみる出版関係のインタビューでの熱いものはらみながらも抑え気味な受け答えや、椎名林檎さんの懐に自然に飛び込む潔さやオールナイトニッポンでオードリー若林氏との爆裂天然トーク・・・当方なりに色々な西先生の側面を見ることで何だか「分かっている」気になっていたのですが、もっと凄かった。
もちろん「エッセイ」という「作品」であるわけなので、そこにも自制は効かせておられるのでしょうけれど、なかなか女流作家が「この前いつものように鼻糞を掘りながらテレビのニュースを見ていると、」(鼻糞は頻出)とか「さあ、そろそろ夏ですよ、豚ども。」とか書けないと思うのです。いや「女流作家」に限らず、ですね。
小説でのあの統制された文体から、例え関西弁の小説であってもきちんと「塩コショウ」された文章から、本作の「血の滴る生肉をそのまま喰らう」ような(そんな野卑ではないですが)文章までのギャップが凄い。譬えとして適当か分かりませんが、村上春樹さん的文体の小説と町田康さん的文体のエッセイをひとりで書けちゃう人、という感じでしょうか。
西さんのエッセイは本作だけと思っていたのですが、「ミッキーかしまし」という前作があるのでこちらもまた読んでみたいですね。
コメント