コンビニ人間

Book

村田沙耶香(2016年/文藝春秋)

第155回芥川龍之介賞受賞作品。作者の村田さんと同じくコンビニ店員である主人公の物語という前情報だけありました。

主人公の幼少の「死んだ小鳥」や「喧嘩仲裁」のエピソードが彼女の持つ「特異性」をクローズアップするのですが、その先にある「何が特異なのか分からない」という強固な普通さが、世間の「普通」とのギャップとなって、その境界線をぐいぐい揺さぶります。揺さぶられるのは読者も含めた周囲の人たちなのですが。

泣きだした妹の赤ちゃんに対して「黙らせるだけなら簡単なのに」と思う主人公に背筋が凍ります。

誰もがコンビニやマク◯ナルドなどの所謂「マニュアル接客」に違和感を持ちながらも、「お互い何も考えなくて良い」というコンビニエンスさを甘受しているわけですが、そこに照準を絞って煮詰めていくと、このようなテーマになるということですね。

たまたま昨日近所のスーパーで品出ししている店員さん同士が「北海道行って来てなぁ」というような話をしているのを聞いて、「あぁ店員さんも普通のおばちゃんなんだよな」と思ったのを思い出します。

当たり前なんですが、店員さんが普通に普通の会話をしていることに違和感を覚えちゃうんですね。だからといって「普通ってなんだろう」「違和感の要因ってなんだろう」と深く考えずにボンレスハムの3Pと卵パックを買って帰るだけなのですが。

「しろいろの街の、その骨の体温の」もそうですが、作者と作品の間に何とも言えない距離感があって、基本読みながら村田さんの気配を感じつつ、ふっと気付くと作品に集中して消えていたりという「出入感」というようなものがありますね。

正直なところ金氏徹平の作品『Tower』を使った装丁は合っていないような気がしました。白い壁からそんな色んなモノが飛び出してくるイメージじゃないんですよね。シンプルに白い壁だけか、コンビニの画像が良かったような。

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