(2012年/ドイツ・アメリカ)
時代や状況がまるで異なる6つのストーリーがパラレルに進むので、最初は何が何やらよく分からないのですが、それぞれきちんと作られた映画を6本同時に観ているような贅沢さで172分という上演時間を感じさせない稀有な作品でした。
パラレルな6つのストーリーが終盤にかけて加速度的に集約されていく感じは村上春樹さんの小説「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」を彷彿とさせます。こちらは2つのパラレルワールドでしたが、本作は6つですからどれがどれだかちょっとややこしいのですが。
トム・ハンクス氏やハル・ベリー嬢など錚々たる俳優陣の中でもひときわ存在感を放っていたのがペ・ドゥナ嬢でした。6つのパラレルワールドの中でも軸となる立ち位置で、この人がいるといないとでは作品の質感が大分変わったのではないでしょうか。その眼力と「・・・・・・」という雰囲気でぐいぐい惹き込んでくれます。
エンドロールで6つのストーリーそれぞれに演じた役柄が分かるのが楽しかったです。「え?あれがトム・ハンクスだったんだ」とか。
「映画化不可能」といわれた原作を見事に映画化したのはウォシャウスキー姉弟とトム・ティクヴァ監督。それぞれ3ストーリーずつ、というのも凄いですね。ちなみにウォシャウスキー姉弟(もともとは「兄弟」でしたが性転換手術で「姉弟」に。これも凄い話ですが)はあの『マトリックス』シリーズ、トム・ティクヴァ監督は『パフューム ある人殺しの物語』(2006年)というんですから濃厚な訳です。
正直なところ、テーマとかメッセージは高邁過ぎてちょっと理解できませんでしたが、何はともあれ凄いものを観たという感じです。
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