サイダーハウス・ルール

Cinema

(1999年/アメリカ)

原作と映画の脚本はジョン・アーヴィング。『ガープの世界』 (1982)、『ホテル・ニューハンプシャー』 (1984)が映画化されていて観ましたが、どれもジョン・アーヴィングらしい登場人物に根差した喜怒哀楽が軸となる印象的な作品でした。

本作もまず俳優陣がいいんですね。世捨て人のような滋味深いようなユニークな産婦人科医にはマイケル・ケイン。本作でアカデミー助演男優賞を受賞しています。

その助手で孤児院出身の主人公にはトビー・マグワイア君。この人のニュートラルな微笑みってちょっと他では見られないですね。そのニュートラルさが見る側の創造力に訴えかけるわけですけれど。本作が出世作で、その後は『スパイダーマン』シリーズのスパイダーマン役(うーん、何だか想像がつかない)、印象的なところでは『華麗なるギャツビー』のニック・キャラウェイ、もうぴったりなハマリ役ですね。

ヒロインはシャーリーズ・セロン嬢。『マッドマックス 怒りのデス・ロード』で丸刈りになったり、『アトミック・ブロンド』で無敵女スパイになったりされてますが、本作では隠し切れない魅力が溢れてしまう奥様役。

中絶や近親相姦という重いテーマを持ちながらも、きちんと登場人物に背負わせて提示されているので、観る側はそれを注視することもできるし、自分ならどうするのか想像することもできて、そういう生真面目に過ぎるともいえる手堅さがジョン・アーヴィングらしいところなのでしょう。

逆に言えばテーマが上滑りして登場人物を経ずして観る側に押し付けられる類いの作品が(映画に限らず)多いのかも、ですね。宣伝文句の「感動作」「問題作」とかがその最たるですが。

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