ジョン・アーヴィング(1989年/新潮文庫)
処女作『熊を放つ』を村上春樹さんが翻訳されていて読んだはずなのですが、全く記憶に残っていません。今回は西加奈子さんがずっとお薦めされているということで。
上下巻に渡る長い物語なので、邪道とは知りつつも事前に色々調べて内容を知ったうえで読み進めました。登場人物も一見多いのでそうでなかったら途中で挫折していたかもです。
冒頭のお父さんお母さんの出会いの部分は全体にフワーッと白い布がかかったようなおとぎ話のような雰囲気で綺麗です。子供たちがせがんで話して聞かせる、というのもアットホームな感じで良いですよね。これぞ幸せな家族。
ですが夢を追い続けるお父さんがホテル経営をはじめてから一家の乗った舟は急流すべりのような展開を見せます。
寄りによってこんな時期に読まなくてもいいんじゃないかと思いながら、それでも止めることも出来ずに一気に読了。
夢を見てそれに向かって進むことが良いとか悪いということではなくて、悪いことは出来る限りやり過ごそう(「開いた窓の前で立ち止まってはいけない」)、そしてとにもかくにも生き続けよう、という全部肯定的なメッセージと受けました。
夢想的に生きようが、手堅い人生を望もうが、色んな不幸や落とし穴は必ず口を開けて待っているわけで、いずれにせよ前述のような「処世術」が必須なのだろう、と。
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