西川善文(講談社)
元三井住友銀行頭取にして、前日本郵政社長の回顧録です。「不良債権と寝た男」というキャッチフレーズのとおり銀行頭取時代の安宅産業やイトマンの破綻の裏側が淡々と、それがゆえに生々しく綴られています。企業を生かす・殺す・自滅する様を見ているとあらためて「企業は生き物」だという気がします。
終盤は郵政民営化の渦に身を投じて初代社長に就任されるのですが、ここで描かれる鳩山大臣との対決は、ちょうどその頃観ていた『ザ・シークレットマン』でのFBI副長官代理とホワイトハウスとの息詰まる戦いと重なります。
たまたま日米の組織のトップの苦悩を同時進行的に垣間見た訳ですが、どこの国だろうと組織の頂上付近というのは基本同じようなものみたいですね。まあ、幸か不幸かこの身を以て経験することはなさそうですが。
【追記】
2020年9月11日西川善文氏ご逝去のニュースが。ザ・ラストバンカーが去り、ひとつの時代がまた遠のいたような感じがします。ご冥福をお祈り申し上げます。(2020/09/12)
コメント
鳩山大臣、懐かしいですね。東京駅前の古い郵便局を建て替えようとしていたら、急に現場を視察して「こんなに壊されているのか」「オレは聞いていない」「今すぐ作業をやめろ」などと大げさに騒いでみせるパフォーマンスに、もっと早く言えばいいのに迷惑な奴って思った事を思い出しました。
西川氏のことは全く知りませんが、最後のバンカーと言わせしめる大人物だったのでしょう。企業は生き物、まさにその通りですね。「法人」という呼称を考えた人は深い洞察力を持っていたに違いありません。
鳩山大臣が懐かしいなんて、OJさん、政治にも詳しいんですね。当方、国内外問わず政治にも疎くてですね、「郵便局建て替え騒動」、全く記憶にございません。まずは三谷幸喜監督の最新作でも観ないといけませんね。
言われてみれば「法人」というのも不思議な言葉ですね。OJさんの幅広い見識と的確な洞察力に脱帽です。