ザ・サークル

Cinema

(2017年/アメリカ)

今をときめくエマ・ワトソン嬢、ハリウッドの西田敏行こと、トム・ハンクス氏が主演、面白くない訳がありません。・・・と思ったのですが。

今をときめくSNSの世界をベースに、運営会社の代表トム・ハンクスは巨大スクーンをバックに巨大なステージの中央のチャラい椅子に腰かけて、チャラいジョークを絡めながら(普通のおっさんが言ったら間違いなく無視される)ホールを埋め尽くす社員にマイクで語りかける・・・アイコンが「林檎」の会社や「顔本」という名の会社などのニュース映像そのままな感じです。もちろんTシャツとGパンという出で立ちで。ジャパン体型の憧れの的ですな。

対するエマ・ワトソン嬢も相変わらず、「大丈夫?何か困ったことがあったら遠慮なくおじさんに言ってよね」と声をかけたくなるようなオーラを放ってます。これがもしスカーレット・ヨハンソン嬢だったらそうはならない。キャスティングって大事ですね。

肝心のストーリーですが、これが微妙なんですね。「絆」という目に見えない強制力を以てSNSでノープライバシーに情報を共有させて、集めたデータを切り売りして儲ける、その是非がテーマだとすると、作り手としての「是非」も提示していなければ、観ている側にも「やっぱりこういうのっていいよね」とか「駄目だよね」という腹落ちを与えてくれない。何か消化できないものを飲みこまされたようなモヤモヤ感だけが残ります。

映画評論家からもネットからも酷評されている所以ですが、そうはいっても錚々たるキャストを揃えて映画のプロたちがビジネス的な成功も折り込みながら作った作品なわけですから、こうなってしまった理由が必ずあるはずです。

観終わってエンドロールが流れた瞬間に思ったことは「あ、これは続編を想定しているな」ということです。

「こんな会社おかしいと思わないか?」とエマ嬢のオーラに惑わされてか、つい本音を漏らす同僚男子。エマと意見が対立して故郷に帰っていた同僚女子とは「誰にも内緒よ」と言いながら、SNS会社のスマホアプリで会話。「夜のお勤め」を生配信された両親。ステージ上で「これであなたもノープライバシーよ!」と超小型カメラを胸につけられて「いやー、エマには一本取られましたな」と扇子で額を打つトム・・・おい!どれもこれもそのままって訳じゃないだろうな、と。

しかし2017年の公開から現在に至るまで続編は製作されていないようです。ならばこう考えるしかありません。「この映画は観客にモヤモヤ感を残すために作られたのだ」と。

冷静に考えると、現実でも「何かおかしいよな」と思いながらSNSを使い、会話アプリで「内緒ばなし」をして、夜中に「夜のお勤め」動画を閲覧し(※当方であることを保証するものではありません)、事故現場でノープライバシーにスマホ動画を撮りまくる・・・是非ということではなく、そこに(この映画で感じたであろう)「消化できないモヤモヤ感はありませんか?」と。

というような文章をネット上に晒していることが、すでにこの「サークル」に取り込まれていることの証しな訳ですが。

コメント

  1. OJ より:

    「観客にプラゴミを飲みこんだようなモヤモヤ感を残すために作られた映画」う~む、問題提起の矛先を良く見たら自分だったみたいな感じでしょうか。
    IT社会にこれだけ馴染んでしまいもう後戻りは出来ない上に、これからAIが参戦してきてどうなる事やらですね。
    ただ、エマ・ワトソン嬢を見かけたら「大丈夫?」と声をかけたい気持ちは持ち続けたいものですねw

  2. C&P より:

    何でも「世の中そんなもんだ」で済ませてしまいがちな昨今、正面からSNSの怖さと言っても、OJさんの仰る通り最早後戻りなんて出来ないですから「ま、便利なんだからしょうがない」で簡単に済ませられない「異物感」を残すために作られた映画ではないかと。それくらいに腹落ち感のない映画なんですね。
    本来のコミュニケーションという意味では、エマ嬢に声を掛けるような「老婆心」こそが最後の砦なのかもしれませんが、それすら「セクハラ」と糾弾される今日この頃・・・ここは世のためと割り切って女の子に声をかけ続けるべきなのでしょう。