(2014/アメリカ)
これはどこかで予告編を見て面白そうだと思った作品で、TSUTAYAの「準新作でも100円セール」に便乗してレンタル。
一流音楽学校でジャズドラマーを目指す生徒と鬼教授の戦いというシンプルな映画(ちょっとだけ恋愛や家族の微妙なバランスも出てきますが)。
予告編でも度胆を抜かれましたが、やはり鬼教授が鬼気迫っております。日本でも学校教師の体罰が毎日のようにニュースになっていて「わしらが生徒の時には当たり前だったけどなぁ」という感じですが、この鬼教授はMr.パワハラですね。パイプ椅子を投げつけるわ、差別用語で怒鳴りまくるわ、もう無茶苦茶です。
「これはいかんよなぁ」と思いつつ、「生徒もよくついていってるよなぁ。何でだろう?」と思う。鬼教授にも哲学らしきものがあって「「危険なのは、good jobという言葉だ」。これにはうーんと唸らされました。なんでも簡単に「いいね!」をつけあう馴れ合いの横行する世の中。それが色んな物事の「退化」をもたらすのだ、と。仰るとおり。
でもこの鬼教師はどうなんだろう?どう好意的に見ても完璧主義な生粋のパワハラ親父にしか見えない。ラストの元生徒への「復讐」も唖然とするくらいにピュアな復讐にしか見えない。それが最後の最後には両者が分かり合ったということなのでしょう。
この映画を巡っては有名な映画評論家である町田氏とジャズ奏者の菊池氏との論争があってこれも面白いのです。そこでも「愛」ということがキーワードになっていたのですが、そう、映画を見ながらずっと気になっていたのは「誰もまるで楽しそうに演奏していない」ということです。
「なんでそんなに楽しそうじゃないのに、貴方たちはそうやって音楽をやっているの?」と訊いてみたくて仕方なかったです。鬼教授も「楽しもう」とは言いますが、そりゃ無理ですって。
たとえテンポ400(!)を正確に刻めなくたって素晴らしい音楽は出来るだろう、と。正確さがそんなにも重要なら人間じゃなくてPCでやればいい。ましてやジャズなんてグルーヴというかある種の「揺れ」が魂の音楽でしょうに。
もちろんそれも(映画さながらにジャズドラマーを目指したことのある)監督がこの映画で言いたかったことのひとつなのでしょう。「いいね」問題や「パワハラ」と「教育」、そして「音楽とは」・・・106分のシンプルな映画でありながら様々な問題提起があってガツンとくる良い映画でした。
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