(2010年/アメリカ)
ジャケ写で「マット・デイモン氏主演作」というだけの前情報。蓋を開けてみれば監督はクリント・イーストウッド氏、製作総指揮にはスティーブン・スピルバーグの名前も。想定外に豪華な布陣です。
というわけで、冒頭のスマトラ島沖地震をモチーフにしたと思われる津波のシーンは圧巻です。当時見た生々しい映像が蘇えります。
この津波に巻き込まれて蘇生した女性キャスター、霊と交信できる能力を持つデイモン氏、双子の兄を事故で亡くして立ち直れない男の子という3つのストーリーがパラレルに進みます。
暗く沈んだ色彩の画面が、彼らの抱える「影」のようなものを丁寧に捉えます。重鎮イーストウッド監督の名人芸が為せる技でしょうか。
途中のデイモンターン、料理教室でペアとなった美人はブライス・ダラス・ハワード嬢。シャラマン監督の「ヴィレッジ」で盲目のヒロインを実に魅力的に演じてました。この二人がお互いに目隠しをして食材をスプーンで舌に乗せて食べさせるシーンは正直「監督、こんなの要ります?」。「ナインハーフ」でもこんなシーンがあったような。嗚呼!ミッキーローク・・・。
パラレルに進んで来た3つのストーリーが(取って付けた感は否めないものの)終盤交錯します。やろうと思えばもっとドラマティックに盛り上げることも十分可能で、大方の観客がそれを望んでいるのも承知で、決して深追いしない品の良さ。これぞイーストウッド監督節。「ナインハーフ」みたいなことをしちゃいかんのです。(しつこい)
「ここで終わったら最高だよな」という絶妙のポイントでエンドロール・・・嗚呼!監督ぅ。
ちなみに映画の音楽も監督の手によるものなのですが、全く印象に残ってません。相済みません。
コメント
ヒアアフター、死後の世界ですか。どんな感じなんでしょうか?霊と交信できたら色々分かるんでしょうが、こちとら霊感も第六感も社会生活における機敏にも疎い方で、全く想像がつきません。この映画ではきっとイーストウッド監督が彼岸と此岸の想いが交錯する美しい話に仕上げてくれているのでしょう。
死んだ人の事を想えるっていうのは人間の特権ですね。
「死んだ人の事を想えるっていうのは人間の特権」というのは深くて重いポイントですね。そして「忘れていく」ということと。
話が大きくなって恐縮ですが、もうすぐ阪神大震災から25年という新聞記事に「若者の関心が薄れている」と。しかしながらそれもある程度仕方のないことなのかなと。何もかも抱えて生きていくわけにもいかないでしょうし。
そんな生と死の関わりをイーストウッド監督の一歩引いた視点で描いたのが本作なのかもしれないですね。