(1996年/アメリカ)
「横たわる死体のそばにたたずむ人影」という『SAW』を彷彿とさせるジャケットが印象的で気になっていた一本。監督のコーエン兄弟というのも聞いたことがあるような気がするので今回レンタル。
「これは実話であり、出来る限り忠実に映画にしてある」というテロップが流れる。うーむ。話すのも嫌になるくらいな理由で金に困っている何をしても上手くいきそうのない主人公が企てた狂言誘拐、依頼したチンピラたちによって連続殺人事件となっていく。まぁ次から次へと人が殺されていく。
事件を捜査するのがなんと臨月間近の女性署長。二人分を食べないと、とばかりにいつでもハンバーガーをほうばっているし、レストランでは観ていて気持ち良いくらいおかずを山盛りにしてがんがん食べる。捜査の仕方も的確で無駄がなく、推理は冴えていて、真面目な顔から笑顔へ自然に変わるとこちらも思わず微笑んでしまうし、シンプルに夫を愛しているし、要するに陰惨な連続殺人を中和してあまりある魅力的なヒロインです。決して美人な訳ではないのですが。
ずっと目撃者たちから「変な顔の男」と言われ続けた可哀想な犯人はスティーヴ・ブシェミさん。「どこかで見たことのある(変な)顔だ」と思っていたら、クエンティン・タランティーノ監督『レザボア・ドッグス』の「Mr.Pink」。同『パルプ・フィクション』にも出ておられます。(コカインの売人だっけ?)
署長のお腹の赤ちゃんに何事もなければよいのに、と思いながら観ていましたが、無事に終了。まぁ実話だからそこまでいじわるな展開もないのだろう、といつものようにWikiPediaを調べてみたら「実際に映画のような経緯を辿った誘拐事件が起きた事実はなく、物語は完全なフィクションである」。なるほど。さすがコーエン兄弟。騙されました。
でもそうだとしても、あれだけ理由もなく人が殺される映画でありながら、すっと観られてしまう清々しさのようなものがありました。それはヒロインの署長のキャラクターもさることながら、画面のほとんどを構成するノースダコタ州の雪景色の純白さのなせる技なのかもしれません。
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