(2003年/アメリカ)
監督はあのフランシス・フォード・コッポラ監督(『ゴッドファーザー』シリーズ、『地獄の黙示録』)の娘、ソフィア・コッポラさん。主演はブレーク直前のスカーレット・ヨハンソン嬢、BOSSのCMにおけるトミー・リー・ジョーンズ氏的なとぼけた味わいを感じさせるビル・マーレイさん。『エド・ウッド』にも出ていたようですが、ちっとも気づきませんでした。まぁあの映画は主役のとぼけ方が尋常じゃなかったですから。
「東京を舞台に、倦怠期のハリウッド・スターと、孤独な若いアメリカ人妻の淡い出会いと別れを描く」(WikiPedia)という内容なのですが、想像していたような「旅先での不倫地獄」みたいなドロドロさは皆無、いつまでも胸に残る印象的な映画でした。
タイトルを訳すと「翻訳不可能」ということかと思いますが、舞台の東京が実に「翻訳不可能」な世界として描かれています。日本人が観ていても「そうだよな」と。
往年の映画俳優役のビル氏がサントリーウイスキーのCMの撮影に来日した設定なのですが、その現場の変なテンションのディレクター(ダイアモンドユカイ氏!)、全く通訳していない通訳。洗練された高級ホテルとその足元にある繁華街、テクノポリス東京と神社仏閣の京都とのコントラスト。ホテルに迎えに来るロボットのように無機質なスタッフと異常なテンションのバラエティ番組の司会者(藤井隆氏!)とのギャップ。日本人が観ていても「なんじゃ、こりゃ?」と思うのに、そこにアメリカ人が放り込まれたらそれは「翻訳不可能」になっちゃいますよね。
そういう世界を背景に、これまたそれぞれに言葉にならない「翻訳不可能」なモヤモヤを抱えた男女が出会って別れるわけですが、恋愛感情というよりシンパシーというか共感というか、これも「翻訳不可能」な実に繊細な繋がりで、それゆえにラストで二人が抱き合ってビル氏がヨハンソン嬢の耳元に何かをささやいて、それに彼女が小さく頷きながら静かに涙するシーンが胸に迫ります。
一体何を彼女にささやいたのか分からない、ということがこの映画のテーマを象徴しているわけですね。多くの物事は繊細かつ「翻訳不可能」な繋がりと分離によって成り立っているのだと。
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