(2016年/イギリス)
1940年、戦時下のロンドンが舞台ということで画面は重く暗く、そんな中で国民士気高揚のためのプロパガンダ映画を作らないといけないというストーリー。
「これは『サイレンス』に引き続いてしんどい映画になるぞ」という覚悟に相反した「ロマンティック・コメディ映画」(Wikipedia)でした。
なにしろ主役のジェマ・アータートン嬢が良いんですね。オドレイ・トトゥ嬢(「アメリ」、「愛してる、愛してない…」)を彷彿とさせる芯の強さを感じさせる演技で、「この人を観ていれば絶対大丈夫」という安心感があります。たとえどんな辛いことがあってもこの人なら大丈夫、と。
空襲を受けたり、恋人を失ったりという出来事が彼女を襲うわけですが、その不幸に堕ちていくでもなく、無闇に抗うでもなく、受け容れて進んでいく様を自然に観せてくれます。どちらかというと不幸に翻弄される主人公の心情に寄り添うことで観客に感情移入させる手法が多い昨今、こういうのはなかなかないのではないかと。
そんな主人公を軸に、「この人なんかしんどいな」という人たちが登場するのですが、ここでも「西さんマジック」的に「あれ?この人なんか好きだな」にいつしか変化するんですね。そのターニングポイントのひとつが休憩時間に歌を唄う場面で、観ていてつい微笑んでしまうような素敵なシーンでした。あらためて「歌」ってこういうものだよな、と。
ラスト近く、出来上がった映画を主人公が観客のひとりとして観るシーンに、「映画」を観るってこういうもんだよな、と思わず目頭が熱くなりました。
繰り返しになりますが、主人公の心情に一喜一憂して感情移入する映画もあれば、こうして映画全体が形作るうねりのようなもので観客を惹き込む映画もあるのだ、と。実に「シネマティック!」な作品でした。
コメント
映画全体がつくるうねりで観る人を惹く映画ですか、これは良い作品のようですね。主人公が映像を観るラストはニューシネマパラダイスを彷彿とさせます。「ロマンティック・コメディ」とは良く言ったもので、ふんわりと心が温まりそうです。
「あれ、この人なんか好きだな」という感じっていいですよね。思えば私の古くからの友人達はおしなべて第一印象は「なんだコイツ」って奴らばかりでした。
予想に反して(というと失礼ですが)良い映画でした。たまにこういうのがあるのでやめられないんですね。だいたい予想を上回るハズレだったりするのがまた面白かったりして、映画という名の泥沼です。
「ニューシネマパラダイス」は気になっていながら「絶対良いに決まっている」ので避け続けている作品です。どうしても号泣する必要があるときに観ようかと。
古くからのご友人の第一印象が「なんだコイツ」ばかりというのは面白いですね。恋愛なんかでも第一印象が最悪な人と結ばれたり・・・ネガティブからポジティブ、マイナスをプラスにひっくり返る「振れ幅」がそのまま人と人を繋ぐ強さになっているんでしょうね。