ほえる犬は噛まない

Cinema

(2000年/韓国)

ポン・ジュノ監督の長編映画デビュー作。宮崎あおいさんのような雰囲気のペ・ドゥナ嬢はどこかで見たと思ったら、『クラウド アトラス』(2012年)で独特のオーラを放っていたのが彼女でした。

韓国語のタイトルはずばり『フランダースの犬』。WikiPediaの『フランダースの犬』項では「本作(=原作の小説)からタイトルだけ取ったものでウィーダ原作ではなく内容も全く関係ない。」とありますが、長編映画デビュー作のタイトルをいい加減につけるとも思えないので何か意味ありげです。

誰がつけたか、邦題の『ほえる犬は噛まない』というのも意味ありげですが、映画を観てみても、これがしっくりきてるのかどうかちょっとよく分かりませんね。ほえる犬は噛まない。

団地(原則ペット禁止)で飼われる犬の失踪を巡る、団地管理事務所の事務女性と団地に住み妊娠中の妻を持つ教授狙いの男性という冴えない二人の物語。韓国とか中国では犬は「飼う」ことに加えて「食べる」対象でもあって、それがわれわれ外国人には新鮮です。上流階級にとってはそれを飼うことがステータスでありつつ、市井の人たちにとっては鍋の具になっちゃいます。

今はやりのK字経済みたいな感じですが、それは『パラサイト』の構図でもあります。『パラサイト』のラスト、結局上流階級になることでしか救われないというメッセージもそうですが、教授狙いの男性のラストの表情も印象的です。こういう救いしかない状況はどうなのか、と。

ラストにペ・ドゥナ嬢が山道から振り返って、鏡の反射光でこちらを射します。観ているお前、お前はどうなんだ、というかのように。

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