顔たち、ところどころ

Cinema

(2017年/フランス)

不思議なジャケットとタイトル。一体どんな映画なのか分からないまま鑑賞。

アコギのチューニングから始まるBGMにお洒落なイラストで映画はスタート。写真家の「JR」氏(33)と映画監督アニエス・ヴァルダさん(87)がフランス各地を旅しながらの写真によるアート活動を追うドキュメンタリー映画です。

いつも帽子とサングラスを外さないクールなJR氏とそれはもうキュートなおばあちゃん監督アニエスさんコンビの飄々としたキャラクターが秀逸です。「いいコンビね。どこで出会ったの?」と問われて、「出会い系サイト」とJR氏。「ちょっと!こう見えても堅い女なのよ」とアニエス監督。素敵です。

写真によるアート活動も想像を絶します。思い付きみたいなのりで(思い付きなんでしょうけれど)、現像機付き(!)自動車からプリントアウトされるデカい写真を壁に貼るんですが、これがもうピタリとはまるんですね。廃屋アパートに一人で住むおばあさんが、アパート一面に貼られた自分の顔の写真を見て絶句するシーンは見ていて胸が詰まりました。

日本でこういうことをやろうとすると、やれ許可だ、やれ規制だと手続きを考えるだけでやる気を失くしちゃいそうですが、そういうところもフランスというお国柄なのか大らかです。役人だか警官だかに「一応聞くけど、許可取ってんの?」と言われて、「そういうことはこのアニエスさんにどうぞ」とJR氏。横のアニエスおばあさんのキュートな失笑でうやむやに。

いつまでもこの二人とフランスの田舎町を旅し続けたくなる、素敵な映画でした。

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