(1984年/アメリカ)
そもそもこの手のホラー映画が嫌いなんですね。夢の中で怪人に襲われ殺されて、現実でも死に至っているなんて、もうどうしようもないわけで、登場人物や観客を怖がらせる手法の安易さたるや、往年の「どっきりカメラ」への憤懣遣る方無さを思い出しました。簡単に言いますと「胸糞が悪くなる」というやつです。
なので、こういう奴がこうなった理由なり弱点なりをつきとめてさっさと退治してくれ!という声なき意見が満場一致で可決されるわけですね。
その期待を一身に背負って、主人公の美人女子大生とモテない系男子のにわかカップルが、「ザ・なんでもあり殺人鬼」フレディ・クルーガーの核心へと迫っていきます。フレディが庭師として勤め、かつてにわかカップルも通った廃幼稚園、そこで彼らが見たものとは・・・。
話は逸れますが、最近の凶悪犯罪の容疑者について「容疑者は幼い頃いじめにあい、就活も上手くいかず、自宅に引きこもりがちだったそうです(というわけで今回の事件が起こりました)」というニュース報道に違和感があるんですね。「トランプ大統領のツイートの影響で株価が下がりました」とかそんなステレオタイプな理由で何かを説明したつもりなのか、と。
これは情報の受け手側も安易に「回答」を求めたがる習性があって、発信側がそれに忖度している部分もあるのでしょう。
殺人鬼フレディ氏はそんな我々の「こういう奴がこうなった理由なり弱点なりをつきとめてさっさと退治してくれ!」という可決を一蹴してくれます。
実は「オペラ座の怪人」みたいに原作があるのかと思っていましたが、監督のウェス・クレイブン氏による脚本です。かなり確信犯的な「お前ら、ホラーをなめんなよ」というストーリー展開に漢気を感じた次第です。
そうそう、観ているときは全く気付きませんでしたが、ジョニー・デップ氏が美人女子大生の恋人役で映画初出演。そんな初々しいジョニー君にも益荒男フレディは全く忖度なし。ふふん。
コメント
エルム街の悪夢って原作無いんですか。私もてっきりエドガー・アラン・ポーあたりの時代に書かれた原作があると思っていました。夢に出て来る殺人鬼に実際に殺されてしまうとは正にホラーですね。
最近のニュース報道に対しては私もその安易さに「なんだかなぁ〜」と感じるところがあります。何も言わずに出来事だけを伝える勇気もなく、当たり障りのないコメントをしたり顔で言われるとげんなりしてしまいます。
「ホラーなめんな」とは漢気溢れるメッセージですね。名作ゆえに何となく原作があると思い込んでいたのかもしれません。
そうそう、江戸川乱歩にありそうですよね。ハードカバーの表紙の絵が怖いようなやつで。
ホラーに限らず「説明がつかない」というのが一番怖いのではないかと。「吸血鬼はニンニクが苦手」みたいなロジックがあればまだ対抗できますが、昨今の自然災害みたいに「理由がないこと」には抗いようがなくて、それでも誰かの「責任」にしたがるのは、そんな「分からない恐怖」に対する防衛本能なんでしょうね。
そういう意味では「そんな予定調和みたいな説明で逃げられると思うなよ」という怖さというか凄味のある名作ホラーです。