(2011年/フランス)
何かにつけて目に入る、車いすの老人とそれを押す黒人の笑顔のジャケ写、「最強のふたり」というタイトル・・・これは絶対「最初はしっくりいかなかった二人が最後にはほらこの笑顔」という感動の超大作(まだ観てないっちゅうに)に違いなく、ずっと避けてきた作品でした。
夜の街、助手席に老人を乗せ、黒人が運転する車が走る。何やら気まずく深刻な雰囲気・・・ほーらやっぱり「最初はしっくりいかなかった二人」だ。
と思いきや、突然黒人がアクセルをベタ踏み、前方の車を左右によけながらよもやの爆走。その横でまったく表情を変えない老人。一体どうなってるんだ?
後ろにパトカーを引き連れながら流れ出したのはアース・ウィンド・アンド・ファイアー「セプテンバー」。最高にノリノリなオープニングじゃないですか!
というわけで、そこからテンポを落とすことなく話が進んでいくので余計なことを考える暇もなく、二人の主人公の真剣なのに軽妙なやり取りに惹き込まれます。
逆に余計な説明がないのがいいんですね。事故で首から下が麻痺した老人がなぜこの黒人を介護人として採用したのか、黒人のハチャメチャな対応になぜここまで寛容なのか、黒人の義理の弟が現れた途端、彼を解雇して気難しい老人に戻ったのは何故なのか。明快な説明はありません。
しかしながらそこには「人種とは」「介護とは」「労使とは」「芸術とは」・・・といった問題が提示されているわけですが、これほどまでに「こうあるべきだ」という押し付けが無いのも珍しいです。
そこは観ている側が「こういうのって素敵だな」と思うことで初めて腹落ちするんですね。「北風と太陽」と同じカラクリです。
カラクリといえば、「さんまのからくりTV」に出ていたハチャメチャな黒人さんを彷彿とさせるオマール・シー氏(仏映画界セザール賞で主演男優賞)の演技もさることながら、フランソワ・クリュゼ氏のまるで諦観の最果てを見てきたかのような滋味深い微笑みが印象的でした。
食わず嫌いで申し訳ございません。良い映画でした。
コメント
「最強のふたり」タイトルがいいですね。しかもフランス映画でカーチェイスとくれば間違いない。昔フレンチコネクションを見てカーチェイスの真髄を知った身としては、ハリウッド映画と違うリアルで鬼気迫るシーンを期待してしまいます。
と、ここまで書いてフレンチコネクションがフランスの映画だったのか調べたところ、見事にアメリカ映画でした(笑)知ったかぶり止めますw
諦観の最果てを見たてきたかのような慈悲深い微笑み・・・これがこの映画で見せたかったシーンかも知れませんね。
「フレンチコネクション」タイトルからして「仏国な関係」ですから、まさかアメリカ映画とは思わないですよね。ジャックされた列車を追いかける「映画史上に残るカーチェイス」ですね。
「最強のふたり」では黒人看護人のハチャメチャぶりとそれをサラリと受け入れる身体障害じいさんの凄味をのっけから強烈に印象付けるシーンでした。
身体障害じいさんの微笑み・・・あれがなければ映画の印象もかなり違ったものになっていたのではないでしょうか。