悲恋

Cinema

(1943年/フランス)

最近古いフランス映画が多いですが、特に意味もマイブームでもなく、たまたまです。

Wikipediaに情報がないので、Filmarksによると「トリスタンとイゾルデ」を脚色したジャン・コクトーの脚本の作品で原題「L’ ETERNEL RETOUR」はニーチェ思想の「永劫回帰」のことだそうです。『ツァラトゥストラはかく語りき』。読んだことはありませんが、人というのは未来永劫同じことを繰り返す、ということみたいです。違ってたらすみません。

それから「トリスタンとイゾルデ」というのは、中世に宮廷詩人たちが広く語り伝えた恋愛物語。騎士トリスタン(Tristan)と、主君マルク王の妃となったイゾルデ(Isolde)の悲恋、なのだそうです。詳しくはWikipediaで。

さて斯様に哲学的な原題を持つ本作ですが、邦題は身も蓋もないことになっております。観る前から大いに「まぁ、そうなんだろうけどさ」という気にさせてくれます。

悲恋の主役はこのお二人。ジャン・マレー氏はマイケル富岡氏と渡辺裕之氏を足して2で割ってコンプレッサーで増幅させたようなルックスで、モノクロ画面でもくっきり鮮やか。対するマドレーヌ・ソローニュ嬢はツンデレとも何ともつかない風で感情移入しにくいタイプ。

ヒールを一手に引き受けるのが小人症のピエラル氏。その存在感と怪演ぶりが凄かったです。

そもそも『美女と野獣』(1946年) 、『オルフェ』 (1950年)のジャン・コクトーですから、理路整然を求める方に無理があります。なぜわざわざ叔父に彼女を紹介しながら、悲恋に悶える必要があるのか、なぜピエラル氏があそこまでマイケル裕之を憎むのか(「俺より濃いキャラは許せねえ!」)、そんな細かいこと「トリスタンとイゾルデ」を脚色しただけなんだから知ったことじゃないのでしょう。

色んな意味で古き良きフランス映画でした。

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