西加奈子(2008年/小学館)
もう何なんでしょうね、中盤の全然泣くところでもないところでボロボロ泣けてくるというのは。
中学生の女の子、緑が主人公で彼女目線で基本ストーリーが進むものの途中でゴシック体の「書簡」が挿入されます。それが誰が誰に向けて書いたものかがはっきりしないので(しかもひとりではなく、複数の書き手であるため)もやもやするのですが、最後には回収されてスッキリします、と言いたいところですが、よく分からないところもあって、一度読み終えてから戻って読んでみたりしました。
女性&雌ばかりで緑以外は並外れてホワーッとした家族なのですが、書簡からそれぞれの人生模様がフラッシュバックされるという構成です。
緑の母、茜さんは何だか『漁港の肉子ちゃん』を彷彿とさせます。悠揚迫らざる、という感じですね。
同級生で男子に人気の明日香と、近所に引っ越してきた影のあるコジマケン君と緑との恋模様は意外な方向に進みます。この辺も一筋縄では行かないところです。
あと中盤に出てくる焼肉屋「金」のテレビ取材のくだりも読んでいて痛快でしたね。熱くなっている人たちへの緑の冷静なツッコミも良い塩梅で。西さんのインタビューなどで見せるホット&クールの絶妙なバランス感覚をあらためて思い起こした次第です。
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