西加奈子(2007年/小学館文庫)
西さんのインタビューで「『さくら』という小説でお兄さんが死ぬんですけど、たとえ物語を動かすためとはいえ、お兄さんを死なせてしまったことを後悔していた」という主旨の発言があって、ちょっと構えながら読みました。
語り手の「僕」はスーパーヒーローのような兄と、これまた美貌と猟奇的な暴力性を備えた妹の間の男の子で、なんとなく世間に対して拗ねたような雰囲気があまり好きではありませんでした。それでもエキセントリックな兄妹のエピソードや中産階級的な善良さで子供たちを包む父と母、またしても言葉を話すさくらという犬・・・どんどん物語に惹き込まれました。
そして兄の事故、死・・・家族がもうバラバラに吹き飛ばされそうな大晦日から元旦に起こった奇跡。嵐の後の穏やかさのようなエピローグに流れるカーペンターズ・・・デトックス、デトックス、でした。
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