西加奈子(2012年/朝日文庫)
これはまた凄い本を読んでしまいました。要素としてぱっと浮かぶだけでも「ゲシュタルト崩壊(ふくわらい・文章や言葉/目鼻等のパーツ・文字)」「カニバリズム」「普通とは」「美醜とは」「恋愛とは」「分かる・理解するとは」・・・他にも色々あるような気がしますが、主人公の女性、定さんを中心とした個性的な登場人物が「どうなの?」と読者に問いかけてきます。
西さんとの対談で椎名林檎さんが「主人公だけでなくて、登場人物すべてが最初と最後で変わっていくのが凄い」と仰っておられましたが、この作品はまさにそうです。
いや、定さんは確かに変わっていきますが、その周りのプロレスラーや自意識過剰っぽい作家、定さんの同僚の美人編集者、外人の風貌を持つ盲目の男性・・・みんな最初は「なんか嫌な奴やな」と思うのですが、見事に「あ、結構良い奴かも」と思わされるんですね。登場人物は一貫しているのですが、実は読み手の気持ちの方が変わっているわけです。
これは見事で、まんまと西さんの筆力に乗せられながら、なんとも読者を清々しい気持ちにさせてくれます。ラストもちょっと脱力するくらいの清々しさ、神々しさでした。
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