西加奈子(2012年/河出書房新社)
久し振りの小説、西さん作品です。
主人公である28歳女性の職業が外人専門のアダルトビデオのモザイク入れ、というところからして振り切ってる感があります。
かてて加えてこの主人公、普通の人には見えない「白い物体」が普通に見えてます。
西さんの作品はときどき「普通では見えないものが普通に見える」系の人たちが登場します。動物の言葉が普通に理解できる、とかですね。
この「白い物体」って何だろう、というのが最後まで読書を引っ張ってくれるファクターになっているのですが、他にも随所に様々な人物として登場してくる「新田人生」という名の男性、小説のタイトルにもなっている、空からふってくるような平仮名のことばたち。
複数の「謎」がラストに向けてふわりと集約されます。決して「伏線回収」ではありません。でも西さんの作品に共通するラストの温かい高揚感が感じられて良かったです。
ご本人があとがきで「絵筆の跡が残っているようなやり方で描いている」と仰っていますが、隅から隅まできちんと把握した上で書くというよりは、時々筆より気持ちが先に行ってしまっているような感じがまた「ふわりとした愛すべき作品」たる所以ではないでしょうか。
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