漁港の肉子ちゃん

Book

西加奈子(2011年/幻冬社文庫)

タイトルといい装丁の西さんの絵(クリムト『ダナエ』の模写)といいインパクト大です。それに負けずに肉子さんこと見須子菊子(みすじきくこ)とその娘である喜久子(きくこ)のキャラクターが秀逸です。大阪出身とはいえ、今くるよ師匠もびっくりの天然ボケぶりと母子家庭という状況ゆえに小学校5年生にして諦観の極みに達した感のある喜久子嬢の全身全霊のツッコミが冴えわたります。

そんな二人が流れ流れて日本海の港町にある焼肉屋に転がり込んで、その小さな漁港が小説の舞台となります。西さんと椎名林檎さんの対談でも出てきた「突然女の子市場に放り込まれてとまどった」という「女子の派閥問題」に巻き込まれたり、病的な変顔をする二宮君の相手をしたり、寒村でのモデル撮影に訪れた若いカメラマンに恋心を抱いたり・・・そうはいっても小学校5年生だし、というエピソードが描かれます。

でも終盤の喜久子が盲腸で入院した病室での焼肉屋の店主サッサンとのやり取り、喜久子の出生にまつわるエピソード、その後の母娘の会話・・・畳みかけるような展開に思わず涙が。

この小説ですが、西さんのあとがきがありまして、これももう作品の一部なのです。で、その後に西さんの編集者である日野淳さんの「解説」があるのですが、これも作品の一部といって良いでしょう。こういう方たちに囲まれて西さんの作品は生まれるんだな、と。

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