フルメタル・ジャケット

Cinema

(1987年/アメリカ・イギリス)

説明不要のスタンリー・キューブリック監督によるベトナム戦争を題材にした作品。スタンリー・キューブリックやフェデリコ・フェリーニなどいわゆる「巨匠」の作品って敷居が高すぎて観るのにかなり助走が必要なんですね。そうはいっても死ぬまでには観ておかなくてはいかんだろう、ということでやっと鑑賞。

前半の海兵訓練所でのハートマン教官の罵詈雑言はどこかで見た事があるのですが、あらためてじっくり見ると凄いですね。よくもこれだけ「クソ」という言葉を詰め込めるもんだな、と。3の倍数ときだけおかしくなるネタみたいな感じで、感心しちゃいますね。

この字幕をまずはあの戸田奈津子さんが手掛けて、かなりオブラートで包まれた翻訳になったのをキューブリック監督がチェックして「下品さがない」とダメ出し、別の翻訳者になったらしいです。そりゃ戸田さんには酷ですよね。

あまりの罵詈雑言ぶり(なんせ本物の元教官が演技指導・・・のはずがそのまま演者に大抜擢)に出演者がマジ切れすることがあったくらいで、そこをオブラートで包んでしまっては「仏作って魂入れず」なのでしょう。作品の根幹にかかわる部分だということですね。

後半はベトナムを舞台にした実戦・・・とはいえ移動嫌いのキューブリック監督、イギリスのセットで撮影されたというのが信じられません。その滅茶苦茶に破壊された街並みにどこか既視感があるのはきっと戦闘モノのゲームのせいですね。もちろんゲームの方が映画に影響を受けて作られているわけですが。

音楽の使い方も面白くて「ここでこれを流しますか?」と。状況の深刻さが一気に遠のいたりして、音楽の強さですね。ラストの「ミッキーマウス・マーチ」も圧巻です。

なので一見「反戦」ぽいのですがそうでもなく、じゃあ「好戦」的かというとそことも距離がある不思議な戦争映画です。そこは、ピースバッジを胸につけながら「BORN TO KiLL」というキャップをかぶる兵士の姿が象徴的なのでしょう。

ひとつはっきりしているのは、そこは「両生動物のクソをかき集めた」のような世界である、と。ハートマン教官曰く。

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