ロウダウン

Cinema

(2014年/アメリカ)

いわゆる「ジャケ買い」で鑑賞。「実在の伝説的ジャズピアニスト、ジョー・オーバニーの半生を娘の視点から描いた伝記ドラマ」ということです。ジョー・オーバニー・・・知らないなぁ。

薬物中毒からどうにも抜け出せないダメ父親を演ずるジョン・ホークス氏のハマりぶりもさることながら、娘役のエル・ファニング嬢から目が離せません。父親が奏でるピアノに聴き入りながら、知らずに湧き上がってくる微笑みを観ていると、こちらも胸が温まります。

だからこそ、ダメ父親やダメ母親や難あり彼氏など、彼女を取り巻く環境の悪さが胸に迫ります。よくこんな環境でひとり立ってられるなぁ、と。『風と共に去りぬ』のスカーレットとはまた違う強さなのかもしれません。

なんとなくスウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリさんを彷彿とさせます。大人から見ても「よく立ってられるなぁ」と。

「伝説的ピアニストの伝記ドラマ」といいながら、映画の中の彼は娘の劣悪な環境の一要因に過ぎず、ドラマの中心は、どこにも拠り所のない状況で何とか立ち続けているエイミー=ジョー・オーバニー嬢であり、のちに彼女は作家となって、この映画の脚本を書くことになります。ほっ。

ところで、あの「レッド・ホット・チリ・ペッパーズ」のベース、フリー氏がトランぺッター役で出演していたとは気付きませんでした。

音楽的なところでは、いわゆる洗練されたSmoothなジャズばかり聴きがちですが、本作で演奏されているような泥玉をこねて投げつけてくるようなのを聴いてみたくなりました。

コメント

  1. OJ より:

    「伝説の」と頭につければ大抵のことはカッコ良く聞こえますが、中でも「ジャズピアニスト」はトップランカーだと思います。
    そして、伝説系の人は、卓越した才能がある一方、大抵順風満帆で行かなかった何かを抱えているものですが、この映画のジョージ氏の場合は薬物中毒なんですね。
    lowdown 最低な現実の中で煌めいた最高の音楽。少しありきたりですが、娘さんが自ら話をまとまている点がこの映画の秀逸なところなのかもしれませんね。

  2. C&P より:

    「プロットはありきたりだが、娘が自ら話をまとめている点がこの映画の秀逸なところ」というのはまさに核心を突いておられて、それが無ければ箸にも棒にもかからない作品です。
    「アウトローな音楽家の父」と「多感な思春期の娘」の掛け算はロクなことにならないということがテーマであって、仮にどちらか片方だけだとわざわざ観るまでもない作品になっちゃいそうです。OJさんの慧眼たるや、脱帽です。