部屋 THE ROOM

Cinema

(1993年/日本)

というわけで珍しく日本の映画です。しかも園子温監督作品。『愛のむきだし』とかですね(観ていないですが)。以前たまたま『自殺サークル』の予告編を観てトラウマになったのですが、これも同監督作品です。

そんな監督の【初期作品】と銘打って本作品がdTVにアップされていたので観てみようかと。

のっけから波止場の倉庫が延々映されて何も変わらない(ちなみにモノクロ映画です)。じーっと観る。何も変わらない。いや、何かが変わっているのかと思ってじーっと観る。変わらない。どこから何が出てくるのか・・・変わらない。という具合に5分くらい画面を凝視し続ける。

これだけで日頃我々が観ている映画との違いが分かろうというものです。

要するに我々の普段観ている映画は「何かが起こる直前からの映像の集積である」ということなんですね。何かが映れば3秒後には何かが起きる。その後場面が切り替わって4秒後には何かが起きる。そんな連続が「映画」なのだ、という思い込みがあるわけです。

やっと波止場の倉庫に足音だけしっかり聴こえるコートの男が小さく現れる。彼がベンチに座って海を眺める。と、右から左から船が次々と現れる。あれだけ待たされた後にこの船を観ると、次から次に船が現れる、ということに「何かおかしい」という違和感を覚えるんですね。不思議です。

登場人物のセリフも「え?何て言った?」というくらいのか細いウィスパーボイスで、これもいかに日頃サービス精神溢れる聞き取りやすいセリフに慣れているか、と思い知らされます。

学校の先生がときどき騒がしいクラスを前にしてすごく小さな声でしゃべって生徒の注意をひく、という作戦に出ることがありますが、あんな感じですね。画面といい、セリフといい、じっと集中しないと何かを逃しそうで仕方ない状況になっているわけです。

ラストは「なるほど」という感じでしたが、なにしろ(繰り返しになりますが)「普通の映画を逆を行く」という気概溢れる映画でした。

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