青い麦

Cinema

(1954年/フランス)

往年のモノクロなフランス映画が続きます。原作のコレットの小説は昔読んだはずですが、まるで覚えていません。海外の小説って翻訳のクセ次第で読める読めないに雲泥の差がありますね。

海岸でボート遊びをしていた青年が強風に煽られ溺れかけて、裸一貫命からがら浜辺に泳ぎ着いて・・・という面白い出だしでしたが、その後は美少女な幼馴染(?)やその友達からやたらキスを迫られたり、たまたま出会った妖艶な有閑マダムに誘われたり、美少女幼馴染がやっていたようにハンケチをイーッと噛みしめて地団太踏みたくなる展開。

登場人物の揺れる心情が繊細に表現された名作、ということなのですが、「甘えるのか」「虐げるのか」「やるのか」「やらないのか」節操がないくらいにコロコロと態度が変わるのでなかなか登場人物の心情に便乗することができません。絶えず前進とバックを繰り返す車に上手く乗れないのと同じです。

それから字幕も、美少女幼馴染が青年を「あなた」と呼んだり「あんた」と言ったりするのに違和感がありました。もちろん恋人モードのときは前者、怒るときは後者ということなのですが、それは役者の演技を見ていれば伝わることです。英語で言えばどちらも「You」なわけで、それをウットリ言うか、怒鳴りながら言うかの違いをあらためて字幕として表現されると何だか鼻白んでしまうんですね。

冒頭に書いた海外小説の翻訳と同じです。「この売女!」とか「あばずれが!」とか言われても、「今日日、それはないよな」と。

というわけで、絶えず前進とバックを繰り返す3人の登場人物と海外翻訳小説的字幕により、イマイチ入り込めない作品でした。

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