ダンサー・イン・ザ・ダーク

Cinema

(2000年/デンマーク他)

「後味の悪い映画ランキング」に必ずランクインしている作品で、粗筋も何となく知っていたので、いつかは観ないといけないと思いつつも全力でこれまで避けてきました。最近そんな「宿題」的作品をクリアしてきたので、いよいよ本作にもトライです。メンタルに影響が出そうならすぐに観るのやめよう。

童顔のような疲れ切ったような一瞬可愛いようなそうでもないような主役のセルマ。想定通りアメリカの底辺での生活。それを手持ち撮影と切り貼りのような編集とセピアな配色で捉えます。

工場での機械作業中にぼんやり空想に耽るセルマ。「絶対ケガするぞ」と冷や冷やしながら観ていたら急にミュージカルが始まってビックリ!え?こんな映画なの?しかもそれまでの手持ち撮影とは一線を画すPVさながらのクールなアングルとカット割り、色彩も抑えた感じながらカラフル。

そんなミュージカルシーンが終わって現実に戻ると機械に指を挟むセルマ。やっぱり・・・。

お隣に住む警官がデヴィッド・モースという時点でもう詰みですね。『16ブロック』(2006年)でブルース・ウィリスを追い掛け回す悪徳刑事役です。どんどん物事は悪い方向に進みながらも絶妙なタイミングで挿入される空想ミュージカルに救われる。セルマだけでなく観ている我々も。裁判所でのおじいちゃんとのタップシーンなんか最高です。そして哀しい。

あまりにもセルマの歌が凄いので、途中から「ひょっとしたら」と思っていたのですが、あのアイスランドのシンガー、ビョークその人でした。一度だけPVを見たことがあるだけだったので気付きませんでした。こんな演技ができる人なんだ。

確かにストーリーとしては後味が悪いこと極まりないのですが、それを映像や音楽やダンスの力で救いながらバランスさせているという、映画ならではの作品だといえましょう。「後味の悪い(ストーリーでも観せる)映画ランキング」第一位。トライした甲斐のある良い映画でした。

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