グリーンブック

Cinema

(2018年/アメリカ)

最近ジャケ写が目について気になっていた作品。

洋画、とくにアメリカ映画を観ているとしばしば気になるのが黒人蔑視の表現で、現実のニュースとしても白人警官による黒人暴行死事件が社会運動になっていましたが、日本人の当方からすると今一つピンときませんでした。

奴隷としてアフリカから連れてこられた黒人への差別が現在まで続いているという歴史は理解できるのですが、例えば男性・女性という性別さえボーダーレスになりつつあるご時世で、人種というボーダーが未だどれくらい足枷になっているのか、と。

『風と共に去りぬ』(1939年)ではあまりにも当たり前に黒人奴隷があごで使われていたので「そんなものなのかな」と思うしかなかったのですが、前述の事件でこの作品が動画配信停止になったと知り、やはり現在では決して「当たり前」ではなかったんですね。アメリカでも「あれはダメだろう」と。『ジャンゴ 繋がれざる者』(2012年)も黒人奴隷が強烈に描かれていましたし、色々な作品で「なんだか黒人って大変だな」と。

前置きが長くなりましたが、本作も黒人ピアニストとそのツアーの運転手兼用心棒に雇われた黒人嫌いのイタリア系白人が主役という黒人差別問題を正面から扱った映画です。カテゴリーとしては「コメディ」ということらしくて、確かに黒人ピアニスト役マハーシャラ・アリ氏による大泉洋さんばりの飄々としたユーモアやヴィゴ・モーテンセン氏(『危険なメソッド』のフロイト役!)の何をしでかすか分からないキャラは面白いのですが、それでも旅先での黒人差別の描写はシビアなものがありました。

悪びれるふうでもなく「このレストランに黒人は入れないのです。しきたりでして」と宣う支配人は見ていて首を絞めたくなりますが、たとえ頭で理解できても身に染み付いた「常識」はなかなか変えがたいものなのでしょう。

本作の二人を見て思うに、差別問題解決の糸口は社会運動のようなムーブメントではなくて、結局個人と個人の繋がりの積み重ねしかないのでしょう。たとえ気の遠くなるような遠回りだとしても。

ラストの運転手の奥さんの一言が良かったですね。

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