(2000年/アメリカ)
ずっとタイトルは知っていましたが、タイトルがタイトルなので何となく避けていた作品。原題「Frequency(周波数)」がどういう曲折を経ればこんなロマンチックなタイトルになるのか、と。
オーロラが出てこないわけではないのです。異常気象によるオーロラの夜、30年の時空を超えて父と息子の無線機の「周波数」がリンクする、というのが映画の軸となっているので。
この30年の時差を使って過去の修正をするわけですね。この手のテーマですぐ浮かぶのが「バタフライ・エフェクト」(2004年)という作品で、現在を改善するために過去を修正して戻ってみると今度は違う部分が破たんしてしまうので、またそれを修正しに過去へ、という映画でした。
ネタバレみたいになりますが、その点でいうと本作では見事に現在が理想形となるんですね。エンディングでは「ほら、僕たち家族はこんなにも幸せです!」という描写が「もうええわ」とツッコみたくなるくらいに延々と続きます。
そんなパリピ・ファミリーに冷や水をぶっかけるようで恐縮ですが、感覚的に「一方だけにそんなプラスが偏るのは不自然ではないか」と思うわけです。殺人犯がこの世から消えるというマイナス(?)だけで果たして貸借が合っているのか、と。
片や「バタフライ・エフェクト」は、この複式簿記的「貸借一致」の法則に厳密に従っていて、「何かを無理に良くしようとすると必ず何かが悪くなる」というセオリーが観客の感覚とも一致するのでタイムトラベルというネタでありつつも映画に説得力を与えています。
要するに「オーロラの彼方」製作陣は映画を撮る前に、少なくとも日商簿記3級を取得すべきであった、ということですね。
コメント
過去を修正することで現在が変えられるか?これは親殺しのパラドックスで考察されているように無理があると思われるのですが、そのあたりの含みが無くハッピーエンドと言う話も悪くありませんね。でもその場合は、バック・トゥ・ザ・フューチャーのような、見終わった後に「映画なんだし難しいことは抜きにして、メシでも食いに行こうぜ」みたいなコメディ感が欲しいところです。
ちょっと視点が変わりますが、「過去に行く事は出来ないか、光より早く移動出来れば過去を見る事は出来る」と聞いた事があります。でもそれも「そんなスピードで移動したら見える過去も超遠くなっちゃうじゃん」と思いました。
いや〜時間って難しいですね。
「バック・トゥ・ザ・フューチャー」同じタイムトラベルものでありながら、覚えているのはデロリアンの炎の轍とマイケル・J・フォックス君とヒロインのダンスシーンくらいですからね。いかにもアメリカンな悠揚迫らざる感じが良かったですが、「オーロラの彼方」の方はオレオレ詐欺っぽいと言いましょうか、変に話が旨すぎるんですね。騙されないためには、OJさんの仰るように「光より速く移動して過去を見るためには尋常じゃない動体視力が必要ではないか」というような「普通の感覚」が大事なのでしょうね。「速すぎて過去が見えないからゆっくり進んで」パラドックス。