西加奈子(2006年/筑摩書房)
西さんの『おまじない』という作品についての横里隆さんのインタビューでもチラッと作品名が出てきて気になっていた作品です。
例によって主人公の作業員の男とスナックでチーフとして働く女、それぞれがしんどいです。大体作品の半分くらいまで彼らに付き合うのがこちらもしんどくて「あぁもう今日はここまで」という読み方なんですが、後半にググッと引き込まれると後はラストまで一直線です。
タイトルのとおり通天閣が小説の真ん中にあって、その真下の喫茶店というのが出てくるので、グーグルのストリートビューで見てみたら「多分ここがモデル、というかそのまんま」という店が確認できます。
その通天閣をまさに舞台にした、そしてそれまで並列だった二人の主人公がクロスするラストが圧巻です。
読後にネットで調べてたまたま出てきた西さんによる本作の解説サイト「前略 昔のわし様」でもう一度泣かされました。久し振りに昇った通天閣の展望台で突然泣き出した西さんに黙って付き合ってくれる友達、というくだりが何とも良いんですね。
それは小説の中では「通天閣の展望台で主人公のチーフに身の上話をするママ」という真逆の設定として反映されているのかもしれません。でもポイントは「黙って付き合ってくれる」か「身の上話で慰める」かというようなベクトルの向きではなく、その真ん中に立っている通天閣の持つアンカーのような存在感なのでしょう。
コメント
通天閣は大阪のランドマークというイメージはないんですが、背が低い分地元の街を見守っているような存在感がありますね。行った事無いですが(笑)きっと西さんは大阪が好きな方なんでしょうねw
通天閣界隈はその名も「新世界」と呼ばれてまして、まさに異なる新たな世界です。最近でこそ観光ナイズされていますが、一昔前は下手に足を踏み入れるとそのまま串カツの肉にされてしまうような雰囲気でした。今はすっかりあべのハルカスがランドマークですが、これでは小説にならないのでしょうね。