アスファルト

Cinema

(2015年/フランス)

「さて、次は何を観ようか」と思ったら、『ELLE』のイザベル・ユペール嬢らしき女性が映ったジャケがあったので、ただそれだけの理由で鑑賞。

いやぁ、面白かったですね。2作続けてフランス映画が面白いなんて、フランス映画が変わったのか、はたまた観ている当方が変わったのか・・・。

コメディ映画だという予備知識も何も持っていなかったのですが、古い団地のエレベーターを修理するか否かという住民の話し合いで、「2階に住んでいるから使わない」という理由でひとり修理費を払わない(その代りエレベーターは使わない)ということになった頭ボサボサの冴えない中年男性がコミカルです。その部屋に置いてあったサイクリングマシーン。

浮いたお金で(?)購入した憧れのサイクリングマシーンの漕ぎ過ぎで(!)車いす生活を余儀なくされることに。2階とはいえエレベーターを使わざるを得ず、夜中にこっそりと買い出しに出るも店はどこも閉まっていて病院の自動販売機でお菓子を買って、そこで生活苦の滲む看護婦さんと出会い、ついつい写真家だと嘘をついてしまい・・・どこまでもコミカル。

他にも団地に住む美男子(『少年は残酷な弓を射る』の主人公をソフトにした感じでしょうか)の向かいに引っ越してきた往年の女優は我らがイザベル・ユペール女史。翌年の主演作品である『ELLE』を彷彿とさせる彼女のハイレベルなツンデレぶりをこれまた独特なソフトさで受け止める美男子君。

そして団地の屋上に不時着したNASAの飛行士(!!!!)と刑務所暮しの息子を持つ寂しいおばさんとのぎこちなくもハートウォーミングな交流。

・・・という突拍子もない3組の男女のやり取りが同時進行的に描かれます。最初はどの登場人物も「何だかしんどい人だな」という印象なのですが映画が進むにつれて、それぞれが愛すべき人たちに変わっていく様は西加奈子さんの作品を彷彿とさせます。

そして実にフランス映画的なフィナーレを以て、その(何だかよく分からない)温かな余韻はいつまでも残り続けるのでした。善きかな。

コメント

  1. OJ より:

    これはまた面白い登場人物たちですね。サイクリングマシンのやりすぎで車いすというのもどうかと思いますが、NASAの飛行士が団地の屋上に不時着しおばさんとハートウォーミングな交流・・・!
    あなたNASAに帰んなくていいの?と心配してしまいます。「アスファルト」という題名も謎ですが、それもこれもひっくるめ暖かな余韻でまとめ上げる、フランス映画なかなかやりますな。

  2. C&P より:

    OJさんのコメントで改めて気づきましたが、タイトルの「アスファルト」も含めて、伏線と思わせて全く回収していないところが多々あります。
    エレベーターを使わない約束なのに使わざるを得なくなって「ああ、こりゃ他の住民に見つかって一悶着あるな」・・・全く見つかりません。
    宇宙飛行士の面倒を見るおばさんが刑務所の面会でつい息子にそのことを漏らしてしまいます(「絶対に秘密よ」)。「ああ、こりゃ大騒ぎになるな」・・・ハートウォーミングに時は過ぎます。
    「なぁムッシュ、何をそんなにピリピリしている。ハリウッド映画の観すぎじゃないのか」と諭されているような。フランス映画、なかなかやります。