ELLE

Cinema

(2016年/フランス・ベルギー・ドイツ)

確か女性ファッション誌のタイトルでも同じのがあったり、ジャケットの雰囲気も何だかお洒落だったので、くらいのノリで鑑賞。

のっけから主役の女性が自宅に侵入してきた覆面男に乱暴される。どこが「何だかお洒落」!

しかしその後、風呂で身体を洗って「やれやれ」という感じで普通の生活を続けるイザベル・ユペール女史。あれ?

もちろん何も感じていない訳ではなくて、撃退スプレーと手斧(!)といった「武器」を購入したりします。

ユペール嬢はゲームソフト制作会社の女社長でもありますが、ゲームクリエイターとして腕を鳴らす社員たちとの微妙な溝も独特な無感覚さでやり過ごします。

どうやらユペール嬢が幼い頃に起こった父親による殺人事件の影響があるようなのですが、いずれにせよユペール嬢のまとう「虚無感」といいますか「諦観」といいますか、自覚的なのか無自覚なのかも含めて、その強固さから目が離せません。

何事にもクールなのかというとさにあらずで、奔放な母親に辛く当たったり、優男風な一人息子に執着してみたり、感情的なところも多分にあります。

「ELLE」(彼女)とは一体何なのか、見定めようとしているうちに映画は終わり、何とも云えない余韻を残します。

所謂「フランス映画」的な雰囲気も十分に残しつつも、突飛な展開に頼らず(これもフランス映画の特徴ですが)、レンガを丁寧に一個ずつ積み重ねていくようなポール・バーホーベン監督の演出とイザベル・ユペール嬢の観客につかみどころを与えない素晴らしい演技(第89回アカデミー賞主演女優賞ノミネート)が印象的な作品でした。

フランス映画は苦手でしたが、ちょっと見方が変わりました。

コメント

  1. OJ より:

    フランス映画って見ようと思わないと見ないもんで、なじみが薄いですよね。名作も多くのある様に聞くものだから、なんとなく敷居も高く感じてしまいます。
    ただ彼らが浮世絵やアニメなど日本の文化やサブカルチャーに対し親しみを持っている事を考えると、そんなに構える必要もないのかも知れませんねw

  2. C&P より:

    そうなんですよ、わざわざフランス映画観ないですよね。「今はすっきりしたい気分だからパス」とか。よくよく考えると「すっきりしたくない気分の時」なんてそうそうあるわけないんですね。
    これまで観たのも『アメリ』ですとか、先般の『最強のふたり』、『愛してる、愛してない』『ニキータ』など、フランス映画という予備知識なしで観たものばかりですが、結局面白かったので仰る通り、構えて観ないのは勿体ないですよね。