アビエイター

Cinema

(2004年/アメリカ)

『ギャング・オブ・ニューヨーク』に続くスコセッシ監督&ディカプリオ主演コンビです。それにしても最近ディカプリオ氏が多いですね。

「アビエイター」というのは「飛行家」。実在の大富豪ハワード・ヒューズという人の半生を描きます。

このヒューズという人は半端じゃない大富豪で、まさに金を湯水の如く使っての映画&飛行機制作。他人事ながら見ていて痛快です。

やっと作り上げた飛行機をヒューズ自ら操縦してのテスト飛行。その墜落シーンのまた凄いこと!実写だ、CGだ、とそんなことを凌駕する迫真の映画的リアリティに息を飲みます。

後半は、映画の冒頭に幼いヒューズが美しい母親に身体を洗われるシーンが象徴する「極度の潔癖症・強迫観念」に苦悩する姿が印象的です。鍛え抜かれた全裸を惜しげもなく晒すディカプリオ氏の怪演が光ります。

空軍の公金不正使用の疑いで公聴会にかけられるのですが、議員との議論にも真正面から喰らいつきます。このときのディカプリオ氏の演技も凄いのですが、演ずるにあたって実際の公聴会のヒューズ氏の口調を出来る限り忠実に再現したとのこと。これほどの衆人環視の中で、土俵際から中央に寄せて最終的には世論を味方につけてのうっちゃりまで持っていくわけですから全くとんでもない人です。

ラストは超巨大な飛行機をまたもや自らのテストフライトで飛ばした直後、例の強迫観念が襲って・・・169分という長い上演時間にして「半生」で終わるところに物足りなさを感じる、という評価が多いようです。

しかしながら、実在の人物故にこの後ヒューズという人がどういう人生を歩むかは歴史が教えるところなので、スコセッシ監督&ディカプリオ氏(製作総指揮としても参加)からすれば、周知のハワード・ヒューズの人生を借りて、このコンビならではの「濃い映画」を撮りたかった、ということに尽きるのではないかと。

「ヒューズがこのあとどうなるかなんて知ったこっちゃないし、そもそも知っとるやろうが」というくらいのものなんでしょう。あくまで映画を撮るためのネタであって、伝記映画を作るつもりなんて毛頭ないわけです。

というわけで、なんとも濃いこのコンビ、本作も含めてすでに6作も撮ってます。連続して観るのは正直しんどいですが、そのうちまた観ることになるのでしょう。嗚呼!濃厚!!

コメント

  1. OJ より:

    「地球上の富の半分を持つ男」ハワード・ヒューズ、この映画は見ていませんが彼の所業は聞いたことがあります。
    そんな彼を題材に濃い映画を作ってやろうじゃないか、と息巻くスコセッシ監督&ディカプリオ氏の作品が面白くない訳がないですねw
    そして波乱万丈な人生のエッセンスが最も濃いところにフォーカスするのは当然であり、むしろ最後まで描かないから光と影がより際立つのではないかと思います。
    昔三国志を読んだ時にも感じたのですが、国を作るまでのエピソードはさんざん盛り上げておいて、その後の話が超あっさりとしているのが逆に物悲しさを際立たせていました。
    「ヒューズがこのあとどうなるかなんて知ったこっちゃないし、そもそも知っとるやろうが」スコセッシ先輩がいつもの赤提灯で話しているシーンが目に浮かびます。

  2. C&P より:

    ハワード・ヒューズ氏をご存じなのが凄いですね。しかもキャッチフレーズがテラレベル!
    三国志は未読なのですが、仰る通りどんな歴史も人生も光と影がくっきりして脂の乗った「旬」のような時期があって、それを外すとやっぱりどこか季節外れみたいな感じになるんでしょうね。やっぱり料理でも何でも「旬」が大事ですね。
    嗚呼今宵も濃厚な映画話をツマミにコップ酒をかたむける先輩の姿が見えるような気がします。胸やけ必至のスコセッシ監督&ディカプリオ氏作品、なんだかまた観たくなってきました!大将!パンシロン!!