(1971年/アメリカ)
これもTSUTAYAみんなのおすすめシリーズ「アクション編」より。というよりも個人的は「いつかは観なくちゃ名作シリーズ」の一本であり、いずれは観ることになったであろう作品。
「麻薬犯罪捜査に執念を燃やす刑事」「映画史上に残るカーチェイス」という前知識からして『ダーティーハリー』のようなのを想定していたのですが、もっと地味でした。
ニューヨークのダウンタウンはちょっとないんじゃないかというくらいに汚らしく、ジーン・ハックマン演ずるポパイ刑事は「別にそんなにエラそうにしなくても」と思うくらいガサ入れ現場では怒鳴りまくるし、丸腰の暗殺者を背後から射殺するし(これもかなり物議を醸したらしい)、ラストでは同僚を射殺して「ま、仕方ないな」くらいでスルーするし・・・。
要するに「正義を追及するにもある一線を越えてしまうと悪と大差ない」ということです。あげく結局は悪玉を取り逃がしちゃってるし。
「おい!貴方たちは一体この104分間何をして来たんだ!」と観客に思わせるのがウィリアム・フリードキン監督(「エクソシスト」で有名。かなり真性どSな脚色をする人らしく、ジーン・ハックマンをいびり倒して撮影現場を緊迫状態にさせ、それを画面に反映させるという手法(?)をとったという)の狙いかと思われます。
当時、ベトナム戦争にまつわる議論で、「おい、正義正義というけれど、本当にそれは正義なのか?正義といえば何をしてもいいのか?」という部分にも絡んでいるようです。そんなメッセージを持つ映画に「ポパイ刑事」のモデルその人がジーン・ハックマンの上司として出演しています(!)。映画の意味が分かって出てたんでしょうか?まぁそもそもはアドバイザーの立場であり、いわゆるカメオ出演ということなんですが。
まぁ、『ダーティハリー』も「法令順守と正義」みたいなテーマがあって、単なる刑事アクションものには終わっていないわけですが、先にも書いたようにこちらはもっと地味だし、後味もスカッとしない。でも、だからといってこの映画が良くないかというとそうではなくて、「スカッとはしないけれど、何かざらついた手ごたえのある何かを残してくれる」、そんな映画だと。やはり名画なんでしょうね。
どうでもいいですが、ジーン・ハックマンがときどきケヴィン・スペイシーに見えてしかたがなかったです。
さらにどうでもいいですが、冒頭の音楽のピッチってあれ、合ってるんでしょうか。わざと一部の音のチューニングを上げてるんでしょうね、多分。
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