七つの大罪

Cinema

(1952年/フランス)

「七つの大罪(傲慢、強欲、嫉妬、憤怒、色欲、暴食、怠惰)」というと、どうしてもデヴィッド・フィンチャー監督の「セブン」を思い浮かべてしまいますが、本作は「罪」ごとに違う監督が撮るオムニバスという構成です。

遊園地の「七つの大罪」という玉投げアトラクションで、人形を落とすとそのストーリーが始まる展開も楽しいですね。

〔第一話・強欲と憤怒〕監督・主演:エドゥアルド・デ・フィリッポ
〔第二話・怠惰〕監督:ジャン・ドレヴィル、主演:ノエル・ノエル
〔第三話・色欲〕監督:イヴ・アレグレ、主演:ヴィヴィアーヌ・ロマンス
〔第四話・嫉妬〕監督・脚本:ロベルト・ロッセリーニ、主演:アンドレ・ドバール
〔第五話・暴食〕監督・脚本:カルロ・リム(第二話の脚本も)、主演:アンリ・ヴィダル
〔第六話・傲慢〕監督:クロード・オータン・ララ、主演:フランソワーズ・ロゼー
〔第七話・第八の罪〕監督:ジュルジュ・ラコンブ、主演:ジェラール・フィリップ

〔第一話・強欲と憤怒〕は「自転車泥棒」(1948年)を彷彿とさせるような感じで、このままシリアスだったら重くなるところをサラッとまとめてくれたのでホッとしました。

〔第二話・怠惰〕映画的技法をコッテリと使っていて楽しいです。逆回しで風に飛ばされた書類が戻ってきたり、フイルムの切り貼りでグラスのワインが赤になったり、白になったり。切り貼りがちょっとずれてたりするのも微笑ましい。

〔第三話・色欲〕「妊娠した」という13歳の少女が主人公ですが、話は意外な方向に。関係ないですが、木の上から紐でフワッと降下するアトラクションでご婦人たちのロングスカートが派手にまくれ上がるのを下から舐めるように捉えるショットたるや、観ている方の「色欲」を大いに刺激、これを大罪幇助と云わずして何と申しましょう。嘆かわしい!

〔第四話・嫉妬〕「無防備都市」(1945年)、「イタリア旅行」(1954年)のロベルト・ロッセリーニ監督。奥様のイングリッド・バーグマン嬢を彷彿とさせるオルフェオ・タンブリ嬢の美しさ。モノクロの画面でもパッと華やいで見えるんですね。猫の演技も素晴らしいです。

〔第五話・暴食〕これは「色欲」かと思わせる演出が楽しい作品。チーズが美味しそうでした。

〔第六話・傲慢〕どことなくイザベル・ユペール嬢を思わせるミシェル・モルガン嬢の演技に引き込まれます。

〔第七話・第八の罪〕これも「色欲」かと思わせて、全体をパッとまとめる巧さたるや!

実は観ている間はゴチャゴチャした映画だな、という印象だったのですが、こうして整理してみると実に贅沢な楽しい作品に思えてきました。いずれにせよなかなかないタイプの映画です。

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