危険なメソッド

Cinema

(2011年/イギリス他)

どんな映画か全く予備知識なく鑑賞。

あのユングとフロイト、そして一人の女性患者の物語です。監督はデヴィッド・クローネンバーグ氏。大昔に『ザ・フライ』(1986年)は観ましたが、他の作品は知らないなぁ。

のっけから女性患者役キーラ・ナイトレイ嬢の演技に度胆を抜かれます。思わせぶりなタイトルと相俟って「この患者はフロイトが何らかの策略のためにユングの元に送り込んだのでは・・・」と変に勘繰ってしまいましたが、そのようなサスペンス要素はなくて、ノンフィクションの原作を淡々と描きつつも、映画にしか出せない品格溢れる美しい作品でした。

「ここらでいっちょ観客を騙くらかして」みたいなことがないですし、結構アブノーマルでセクシャルなシーンもあるのですが、なんだか絵画の裸婦を見ているような風情なんですね。

ユングとフロイトを演じた役者さんも全く違和感のない、きちんと体重の乗った重厚な演技で魅せてくれます。ラストシーン、のどかな湖畔で悄然と虚空を見つめるユングの姿が印象的でした。

ハリウッドの娯楽映画が遊園地だとすれば、こちらは美術館。もちろんどちらが良い悪いということではなくて、どちらも楽しめるわけですが。

コメント

  1. OJ より:

    フロイトとユングと魅惑の女性ですか。これは色々とありそうですね。私の友人に心理療法士がいるのですが、深層心理とか精神分析の話は難しくてチンプンカンプンです。
    昔ある哲学者が「心とは何ですか?」と問われ「表現し尽くした後に自分の中に残った表現出来ないもの」と言っていましたが、この作品のラストで「のどかな湖畔で悄然と虚空を見つめる」ユングを味わい深く感じるのは、人は皆その事を直感的に知っているからかも知れませんね。
    夜な夜な「グラスを傾け思わせぶりに片眉を上げる」練習に精を出す身として参考にさせていただきます。

  2. C&P より:

    精神分析の権威であるユングを以てしても、フロイトや患者女性との関係で「感情の袋小路」に入ってしまう様はまさに「医者の不養生」、職業とその人は必ずしもリンクしているわけではないということでしょうか。心理療法士のご友人(!)にも色々ご意見をお聞きしたいですね。
    表層的な日々の暮らしの奥にきっとあるであろう深層心理的な「核」「ベース」みたいなものについて最近曲を作ったこともあり、「心とは」の哲学者の回答にはグラスを傾けつつ片眉上げて賛同の意を表したいところです。