THX 1138

Cinema

(1971年/アメリカ)

ジョージ・ルーカス氏のデビュー作で、原作・脚本・監督を一人でこなしておられます。で、結論からいうと商業的には鳴かず飛ばず、配給会社が「訳が分からない」とジョージ氏に無断で5分カットしたらしいです。5分カットしたくらいで一体何が変わるのかという気もしますが。

いや、もう最初から「あ、あの手の作品だ」と。『2001年宇宙の旅』ですとか『時計じかけのオレンジ』のスタンリー・キューブリック監督作品や『マルホランド・ドライブ』のデヴィッド・リンチ監督作品の如く「凡人に分かりやすいような映画?そんなの関係ねぇ!」系ですね。

なんせあのフランシス・フォード・コッポラが製作総指揮ということで無下にもできなかった配給会社のボヤきも分からないではない「訳が分からない」映像の連続ですが、俯瞰して観れば「がんじがらめに管理された非人間的世界から、人間性を以て脱出を試みるストーリー」であることは分かりますし、ジャンケン後出し的に言えば「やっぱりジョージ・ルーカス氏は違うよね」というところに落ち着くのでしょう。

あの黒澤明監督の『羅生門』も当初、映画会社は「訳が分からない」と言っていたにもかかわらず、後に世界が認めた途端「我々がKUROSAWAを世に送った」と手の平を返したというエピソードもあるように、たとえ映画人であっても「天才」をリアルタイムで認識するというのは困難なことなんでしょうね。

というわけで、この手の作品の基本的観賞スタイルは「決して理解しようなど大それたことは考えずただ観る」ことに尽きます。最たる凡人の当方にとっては。

コメント

  1. OJ より:

    前例の無い作品を作ろうとするなら、酷評こそ勲章なのかも知れませんね。陶芸の樂焼の当主が、自分の作品を評論家から「訳がわからん」と評価され「勝ったと思った」と言っていたことを思い出しました。ジョージ・ルーカス氏がそんな作品を作られていたとは意外でした。
    でも映画の場合は興行がありますから、配給会社の人達も困ったでしょうね。「無断で5分カット」が彼らの意地と抗議であったなら笑って許してあげたいですね。お猪口に熱燗をついでやりながら「そりゃたまんないね〜、で、どこカットしたのよ?」って聞いてやりたいです。

  2. C&P より:

    樂直入さんの日経のコラムも面白かったですね。世の名経営者も「役員が全員反対だったので、これはいけると思った」とかですね。「異例」でなければ意味がない、と。頭では分かっちゃいるのですが、どうしても前例をトレースしちゃうんですよね。音楽も然りで。
    それにしても「そりゃたまんないね〜」とお酌するOJが目に浮かぶようです。セリフでは同情しているようでいて、どう見ても目が笑っているの図。特に「〜」がもう。

  3. OJ より:

    めちゃにやけている事間違いないです。