白鯨との闘い

Cinema

(2015年/アメリカ)

しかし「白鯨との闘い」(原題:In the Heart of the Sea)というタイトルも、「夏休みの思い出」という感じで何だか小学生低学年チックですね。WikiPediaによると「『白鯨のいた海』という邦題で公開される予定であったが、後に変更となった」ということですが、これもわざわざ変更するほどのことでもなかろうて。

という苦言を呈しつつも、映画自体は実に映画らしい映画です。締まりのある画面と常時全力で畳み掛けてくるオーケストラ、観るものを引き付けて放さない俳優諸氏の演技。そして時々挿入される意表を突いたカメラアングル。

監督は『ダ・ヴィンチ・コード』のロン・ハワード氏。映画に求められるポイントを手の平の上に乗せながら、余裕綽々でコントロールしている感じです。

前半は畳み掛けるようなテンポでどんどん話が進むので「おいおい、そんな飛ばしていいの?」と心配になるくらいなのですが、それも後半の漂流ゾーンの停滞感とのギャップを生むための計算と思われます。ここまでくるともはや老獪です。

我が物顔で海中を跳梁跋扈(?)する白鯨たちの映像も違和感なく素晴らしいですし、生き残った乗組員の老人による懐古劇という二重構造でありながら、どちらもソツなくまとめる脚本も過不足なし、隅から隅まできちんとコントロールが行き届いた映画らしい映画・・・しかし、ここまで徹底されると逆に物足りなさを感じる・・・のは贅沢の極みなのでしょう。罰が当たります。

コメント

  1. OJ より:

    メルヴィルの白鯨の元になる話の映画ですね。マッコウクジラは深海で巨大なダイオウイカを食べているそうですが、どうしてそんな無茶をしているのか考えたことがあります。私の説は、彼らは元々もっと浅いところでやりあっていたが、より深い海域へ逃げるダイオウイカを追っていくうちに深海に達した。つまり「お互いの意地でそうなった」です。
    そしてマッコウクジラの頭部に詰まる脂は、意識的に固化させ重くし一気に2000m潜航する事を可能にしているとの説があります。
    いやはや意地って凄いですね〜、そんな奴らに頭突きされたら…、海の男達に合掌。

  2. C&P より:

    うわわ、OJの御説、井伏鱒二の『山椒魚』のような世界ですね。「今でもべつにお前のことをおこつてはゐないんだ」。
    いやいや、そもそもマッコウクジラがダイオウイカを食べていることや頭部の脂に関するトリビアやその理由を深く掘り下げるOJさんの博学ぶりに脱帽かつ敬礼。