グエムル-漢江の怪物-

Cinema

(2006年/韓国)

『パラサイト 半地下の家族』のボン・ジュノ監督と主演は「半地下のお父さん」ソン・ガンホ氏・・・と今回知る前からジャケ写を見て気になっていた本作。『パラサイト』の13年前ですから、そんな前からこのコンビの映画があったんですね。なんせずっと韓国映画をスルーしてきたので・・・相済みませんでした。

というわけで、あの「半地下父さん」が金髪で現れたときには度肝を抜かれました。肌もつやつやして若い!

怪物モノというのはだいたい、序盤をその「気配」だけで引っ張って、ここぞというときにグワッと現れて、「実はこういう経緯で怪物たるに至りまして」という背景が明らかになると同時に弱点も提示され、何とか退治して一件落着・・・という流れだと思うのですが、本作ではいきなり「経緯」が提示されます。

冒頭、韓国の研究施設でアメリカ研究者が「埃だらけの要らん薬品なんか全部シンクに流してしまえ!」。WikiPediaによると、これは本当にあった出来事のようで、それに対するボン・ジュノ監督の怒りが本作のベースになっているとのこと。怪物もすぐさま河川敷に現れて大暴れ、金髪父さんの娘をくわえて河へ。

そこから映画の本筋である「(1)金髪父さん家族の娘探し」と「(2)怪物がまき散らしたウイルスを巡る世の中の反応」が描かれます。(2)では、信号待ちをしている人たち(みんなマスク着用)の内、ひとりのおっさんが咳き込み、思わずマスクを外して唾を吐いた水たまりを通りがかった車がはね上げ逃げまどう人々・・・13年前の作品でありながら、まさに今のリアルな世の中ですね。

(1)も『パラサイト』同様、観客が無意識に望むような予定調和では終わりませんがそこにあざとさはありません。「色々問題はありましたが、斯様な次第でそれなりに収まりましたとさ」では済ますことができないんですね。世の中には「作品の中でテーマを消化・昇華してしまう」タイプの自己完結的作品もいっぱいあるんでしょうけれど、そこで終わらないところが評論家の方曰く「監督の作家性」なるものなのでしょう。

ドラマでも色々と一世を風靡している韓国作品。出来る限り流行りを避けてきたヘソ曲がりな当方ですが、遅ればせながら観ていくことになりそうです。

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