リビング・デッド サバイバー

Cinema

(2018年/フランス)

別れたばかりの彼女のアパートにカセットテープを取りに行ったら、クラブ風ホームパーティ真っ最中。なかなか目的の物を手に入れられないまま部屋で眠ってしまい、翌朝扉を開けたら、世界はゾンビだらけになっていた・・・これがハリウッド映画ならもっとドラマティックに描かれるのでしょうけれど、そこはフランス映画、「まぁそういうこともあるかもしれないね、セニョール」という感じで落ち着いているというか、ナチュラルというか。

アパート下の道路を徘徊するゾンビもまき散らかされたゴミもぶっ壊れた車も手作り感が伝わってきて、観ていて「これ、後で片付けるの大変だろうな」と要らない心配までしちゃいます。

4階建てくらいのアパートが全て主人公の「リビング」状態。ある部屋にはドラムセットがあって、独り身の辛さを爆音に託します。観客は音に反応するらしいゾンビたち。わらわらとアパートの下に群がってのスタンディングオベーション!

結構この独り身の辛さパートが長くて、主人公もゾンビを的にオモチャの鉄砲で遊んでみたり、観ている側とともに冗長風情を楽しみます。フランス映画ですから。そういえばハリウッドのゾンビ映画でも途中ゾンビで暇つぶしするのがありましたね。逃げ込んだショッピングモールの屋上で。どれだっけ?

閑話休題。

ある日、アパートに入ってきたNonゾンビ女性をショットガンで撃ってしまったところからストーリーが動き出します。そして「まぁそういうこともあるかもしれない」風な主人公の気持ちにも変化が出てきます。

というわけで、ジャケットだけ見るとどう考えてもハリウッド的ゾンビ映画(戦闘能力抜群の主人公とタンクトップ姿のヒロインが並み居るゾンビたちと壮絶な戦いを繰り広げるザッツ・エンターテイメント!)ですが、本作にとってゾンビは単なるシチュエーション、独り身を強いられた人の生態ってたとえばどんな風でしょう?というのを鑑賞する作品です。のんびりワインでも傾けながら・・・でもないですか。

コメント

  1. OJ より:

    フランス人の作るゾンビ映画と聞くと妙にリアルで精神的に凹みそうな気がしますが、この作品は牧歌的要素が高そうですね。先日家族が日本のゾンビドラマを見ていたので暫く一緒に見ていたのですが、ゾンビ達が群れて人を襲ってくる設定は世界共通の様です。「皆んなゾンビになれば争いの無い世になるのでは?」と問題提起したところ、早くあっち行け的な一瞥を喰らい退散しましたが、ゾンビ達って仲良さそうですよね。アメリカのゾンビ達は超パワフルで鬱陶しいですが、人がいないと大人しいし、添付して頂いている写真のゾンビ達も、遠目には皆少し首を傾げて可愛いらしいです。

  2. C&P より:

    「皆んなゾンビになれば争いの無い世になるのでは?」画期的かつ真っ当なご意見ですね。生死を懸けて戦うから大変なだけであって、受け入れてしまえばどこまでいっても「死あるのみ」。「お前、死にたいのか!」とか「死に気でやれ!」なんてまさに死語。死人に鞭打ちの極み。いやぁ天下泰平です。
    でもそんなドラマだったら多分ご家族は見向きもしないのでしょうね。オールゾンビキャスト。
    仰る通り、あの『ワールドウォーZ』の元気溌剌なゾンビなんかに比べれば、本作のゾンビなんて『ひつじのショーン』級の可愛いらしさです。