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地下の鳩

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西 加奈子(2011年/文春文庫) 馴染みの(というほどではないですが)大阪は夜のミナミが舞台なので、あの猥雑な雰囲気が自然に浮かんで非常に作品の世界に入って行きやすかったです。 普通に歩いてたらバニーガールの格好をした女の人が声をかけてきたりして、もう訳が分からないんですね。 表題作の「地下の鳩」と「タイムカプセル」という作品が収められているのですが、「地下の鳩」が「吉田」という男と「みさを」と...

ホテル・ニューハンプシャー

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ジョン・アーヴィング(1989年/新潮文庫) 処女作『熊を放つ』を村上春樹さんが翻訳されていて読んだはずなのですが、全く記憶に残っていません。今回は西加奈子さんがずっとお薦めされているということで。 上下巻に渡る長い物語なので、邪道とは知りつつも事前に色々調べて内容を知ったうえで読み進めました。登場人物も一見多いのでそうでなかったら途中で挫折していたかもです。 冒頭のお父さんお母さんの出会いの部分...

職業としての小説家

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村上春樹(2015年/スイッチ・パブリッシング) 図書館にあったので。村上春樹さんのエッセイが好きなんですが、「あれ?こんなに回りくどい文章だったっけ?」と。確かに隣の家に行くのに、町内を逆に回って行くような回りくどさはありましたが、その距離が以前より長くなったような感じです。まぁ、読み進むうちにすぐ慣れましたが。 それにしても村上春樹さんレベルの作家であっても、評論家等の批評にはダメージを受けち...

さくら

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西加奈子(2007年/小学館文庫) 西さんのインタビューで「『さくら』という小説でお兄さんが死ぬんですけど、たとえ物語を動かすためとはいえ、お兄さんを死なせてしまったことを後悔していた」という主旨の発言があって、ちょっと構えながら読みました。 語り手の「僕」はスーパーヒーローのような兄と、これまた美貌と猟奇的な暴力性を備えた妹の間の男の子で、なんとなく世間に対して拗ねたような雰囲気があまり好きでは...

あおい

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西加奈子(2007年/小学館文庫) 西加奈子さんのデビュー作になります。タイトル作を含む3篇収録。 『あおい』 主人公の「わたし」にも、その彼のカザマ君にも、登場人物の誰にも感情移入できなくて、物語にも入っていけなくて表面をビャーッとなぞって終わってしまいました。 西さんの作品の登場人物は、出てきたときは「うわぁ、あんまり好きじゃないなぁ」と思いながらも、物語が進むにつれて「あ、結構良い奴かも」と...

きいろいゾウ

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西加奈子(2008年/小学館文庫) 又吉直樹さんが「西さんの小説って、ちょっとしんどそうやな、いう主人公ばっかりなんですよ」と仰ってましたが、今回も日常生活に支障はないものの心臓に病があるちょっと情緒不安定な妻の「ツマ」さん、それをふんわりと支える坊主頭で背中に鳥の入れ墨のある小説家「ムコ」さんの物語です。 で、この「ツマ」さんが動植物と話が出来るんですね。西さんの小説の主人公って、霊が見えたり、...

ふくわらい

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西加奈子(2012年/朝日文庫) これはまた凄い本を読んでしまいました。要素としてぱっと浮かぶだけでも「ゲシュタルト崩壊(ふくわらい・文章や言葉/目鼻等のパーツ・文字)」「カニバリズム」「普通とは」「美醜とは」「恋愛とは」「分かる・理解するとは」・・・他にも色々あるような気がしますが、主人公の女性、定さんを中心とした個性的な登場人物が「どうなの?」と読者に問いかけてきます。 西さんとの対談で椎名林...

漁港の肉子ちゃん

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西加奈子(2011年/幻冬社文庫) タイトルといい装丁の西さんの絵(クリムト『ダナエ』の模写)といいインパクト大です。それに負けずに肉子さんこと見須子菊子(みすじきくこ)とその娘である喜久子(きくこ)のキャラクターが秀逸です。大阪出身とはいえ、今くるよ師匠もびっくりの天然ボケぶりと母子家庭という状況ゆえに小学校5年生にして諦観の極みに達した感のある喜久子嬢の全身全霊のツッコミが冴えわたります。 そ...

舞台

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西加奈子(2014年/講談社文庫) 作者の西加奈子さんと椎名林檎さんの対談を見て、元々は椎名さん目当てで見たにもかかわらず、西さんのキャラクターや発言が素晴らしすぎて、対談に登場した作品を読んでみたい、と。 番組中にも作品の一部が紹介されたりしていたのですが、読んでみると印象が違いました。 主人公の葉太(ようた)君が29歳のニューヨークひとり旅で様々な人種の人たちとの交流を経て自意識過剰さが変わっ...

炎上する君

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西加奈子(2010年/角川文庫) 表題作を含む8編の短編小説集。 「太陽の上」 まず主人公が「あなた」というのが新鮮です。著者から「具体的にイメージして下さい」と絶えず言われながら物語が進んでいく感じです。「太陽」という中華料理屋と同じ建物の3階の部屋に3年間引きこもり中の「あなた」の物語。途中「すわ、修羅場到来か?!」と思わされる仕掛けがあってドキドキしました。ラストがじんわりと感動させられます...